#3 レポートで遊ぶな

 オンライン授業はインドアな人間としてはとても気楽だ。そうでなくとも家から学校までの移動時間がゼロになるのは良く捉えている方も多いのではないだろうか。
 一方で、課題の多さには閉口する。私は芸術系の大学に籍を置いているため実技はまず間違いなくあるのだが、テストができない分増加するレポートがなかなかしんどい。教科にもよるが、授業の出席確認を兼ねて毎時間レポートが出され、予習として毎時間レポートが出され、最終レポートの練習としてレポートを出され……大学用アカウントのタイムラインは、大抵押し迫ってくる課題の波から逃れようとあっぷあっぷしている人間に溢れている。

 私はレポートが得意ではない。というより、書き方が全く判っていない。生徒のほとんどが就職していく職業高校出身のため、レポートを今まで教わった事も書いた事も無かったのだ。突如始まったオンライン授業で、例年通りならあった筈のレポートの書き方講習会(?)も無くなってしまった。よくこの状況でレポートを出せているな、私。偉いぞ私。

 ロクに書き方も判っていない癖に毎週のようにレポート(感想文)を出されれば、書きぶりも内容もなんだか似てきてしまう。焦った私は、とりあえずレポートを楽しんで書こうという方向に気持ちを切り替えた。楽しいことなら苦ではないし、何より筆が乗るので早く終わるだろうという考えだ。それは間違っていなかったが、ある意味では間違っていたのかもしれないと今なら思う。

 楽しんで書く、つまり気負わない文章で書き始めたらレポートはするすると終わっていく。勿論「やばい」とか「めっちゃ」みたいな言葉は使わないが、ガッチガチの小学生の読書感想文からは脱却したと思う。なにより1時間もあれば1000字のレポートを余裕で書けるようになったのは大きい。
 そんなこんなしていたら、ここ最近になって期末レポートがちらほら出てきた。今後さらに積み上がる可能性は高い為、早めにこなしていこうと考え、最も気の乗らない宗教のレポートから手をつけることにした。
 宗教学ならまだとっかかりがあったかもしれないが、マジ宗教の授業(しかも必修)の感想レポートなので「すごいとおもいました!」くらいしか思うところはない。ぶっちゃけ興味なさすぎてすごいとも思っていない。
 しかし私はレポートを楽しむ術を得ている!実験結果ならまだしも、感想ならnoteみたいな文書いときゃいいだろ!とバリバリとWordの画面を埋めていった。ラジオを聴きながら1時間で終わった。優秀すぎる。誇らしい気持ちでレポートを提出した。ブラウザでポップアップがブロックされてもだもだしたのは余計だった。

 少し落ち着いてから、自分の書いたレポートを見返した。大まかな構想としては「はじめはネガティブでしたが、宗教の考え方をうけてポジティブになりました!」みたいな感じだった。実際その構想から外れてはいなかったのだが、見返して頭を抱えた。

 「生きるのって怠いなと気づいてしまった人と他の人との間では永遠に分かり合えない何かがあると思う」
 これは私が過去に投稿したSNSでの呟きだ。
 私はずっと無気力と希死念慮を心の片隅に飼っている。
(中略)
 親鸞と現代を受けてこの感覚が変わったかと問われると、正直なところ、変わっていないと答えなければならない。そもそも何年も積み重ねてきた感覚や考え方が半年の講義で180度変わるような事はほとんどないだろうし、変わってたまるかという意固地な心すらある。
(以下略)

 どういうこと??????????

 何故こうなったのか。何故宗教のレポートで希死念慮を吐露したのか。何故わざわざ「たかだか数時間で変わるなら苦労しない」などという文をぶち込んだのか……
 正直筆が乗っていたというか調子に乗っていた。最初からアクセルベタ踏みだった自覚はある。この後に「しかし学びは大いにあった」として考えを書き加えているが、もう取り返せねぇぞという感じである。
 自己嫌悪に陥りかけたが同級生にはウケが良かったので、先生のウケポイントに1ミリでも引っかかれば良いと思う。単位を下さい。というかそれよりもまずスクールカウンセラーをあてがわれる可能性があるのが目下最大の悩みになってしまった。とんでもないことをしてくれたな。自分だけど……

 ここまでグダグダと書いたが、別段私はオンライン授業への批判がしたいわけではない。先述したように私はメリットを享受して割と伸び伸び授業を受けている。ありがたいことに私の大学はほとんどがリアルタイムの授業だし、動画を用意していたとしても先生は必ず待機していてすぐに質問に答えられる体制をとって下さっている(まぁ施設利用料分は学費減額してくれないかなと思うがそれはそれとしよう)。‬
 とりあえず私から一つ言えるのは、レポートで遊ぶなという事のみだ。これは自戒である。

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