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にわか落語ファンの知ったかぶり

第1回「志ん五、一之輔兄の胸を借りる」道楽亭出張寄席

タイトルからしてエクスキューズになってるが、落語ファン歴わずか3年の新参者が好き勝手なことを書こうというのだから、あらぬ攻撃を受けないよう「多少の誤解や間違いには目をつぶってね」と最初から守りを固めているわけです。サッカーで弱小チームが強豪チームにあたる時に、とにかく失点しないように守備を重視して、あわよくばカウンター一発で勝ちを拾おうというセコな戦略と同じやり口なわけです。

で、第1回目のネタは4月10日に開かれた道楽亭出張寄席「志ん五、一之輔兄の胸を借りる」。昨秋、真打ちになった古今亭志ん八あらため志ん五師匠が、先輩である春風亭一之輔師匠をゲストに迎えた二人会で、志ん五さんは新作古典の二席、一之輔さんは長講一席を披露してくれた。まあ、一之輔さんはマクラで「勝手にチラシに“長講一席”と書かれた、ブツブツ」と言ってたけど、この方は長かろうが短ろうがきっちり自分の世界を作って確実に笑わせてくれるから、こちらの期待を裏切らないし、さらにその上を行ってくれる。志ん五さんは新作と古典の二刀流。どちらもそつなくこなし、人懐っこい笑顔を見てるだけで自然とこちらもニコニコしてくる。ベテランの落語家さんのなかには強面の人がいるけど、そんな人でも妙に可愛いところがあって、愛嬌ってのは落語家の限らず人に好かれる要素なんだなと、改めて思うのです。

このお二人、今の落語界のスタープレイヤーと注目のルーキーなので、「さすが!」と拍手喝采、大満足の落語会になったけど、この日印象的だったのは前座の春風亭与いちさんの開口一番、「狸札」。前座さんの高座は失礼ながらいつも漫然と聴いていることが多いが、与いちさんの噺はグッと僕の心に飛び込んできた。「この落語家さん、上手いなあ」と聴き惚れてしまった。

狸札は志ん五さんが三週間前に教えたものだそうで、何遍練習したのかしれないけど、短期間でこんなに喋れるようになるんだと感心しきり。去年の三月に一之輔さんの二番弟子として入門して、前座になって楽屋入りしたのは今年の一月。駆け出しも駆け出し、ペーペーの落語家なのだけど、思わぬ逸材を見つけちゃった感じ。

そういえば、先日見た前座さん、春風亭一朝師匠のお弟子さん、春風亭朝七さんも上手かった。良い人材が集まるのか、教え方が上手いのか、一朝一門、恐るべしである。

今や空前の落語ブームだそうで、そのせいか、この世界に入ってくる人が増え、才能のある人が入門してくる確率が高まっているのかも。

いずれにせよ、将来が楽しみな前座さんが何人もいるのはうれしい限りです。




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