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尾張/三河/遠江国人の気質

 ──人の気質(性格)は何によって決まるのか?

①家庭環境(DNA、生まれ育ち、兄弟の数、貧富、「蛙の子は蛙」 etc.)
②生育地の風土(同じ里の住人の性格は似ている。「お里が知れる」)
③職場環境(職人気質)
・・・

 古代中国では、「風土(ふうど)」は、「季節の循環に対応する土地の生命力」を意味したが、その土地の生命力には地域差があるため、「風土」は、「場所ごとに異なる地域差」を意味するようになった。現在、「風土」といえば、その土地の気候、景観など、その地の住民の生活や歴史、文化に深くかかわる環境をいう。

 『人国記(じんこくき)』は、日本各国人の気質(性格)、風俗(生活文化の特色)を地理的環境と関連させながら論じた書でである。
 『人国記』(区別するため『旧人国記』)は、室町時代末期の書と考えられるが、鎌倉時代中期に北条時頼が書いたと伝えられている。武田信玄の愛読書だという。
 『新人国記』は、関祖衡が改訂して元祿14年(1701年)に刊行された書である。

(注)現代語訳は難しい。自信ないです。参考として載せておきます。

1.尾張国人

■『旧人国記』
 尾張国の風俗は、進走の気強くして、善を見れば善に進み、悪に馴るれば悪に染み、我が親しき者の善き事少しあれば、大分に能きやうに云ひなし、悪き事あれども、異見を加へ、後来の過ち無きやうにとある志無くて、共に推し隠して、人の非を揚げて、「夫れが悪よりは軽き」などと、談ずるのみにて、邪智、我慢第一強く、人を足下に見なし、人の善を消し、我が悪を隠すの類にて、万事根のとくる事なく、唯、大風洪水の出るが如くにて、根にしまる意地少なし。然ると雖も、形儀(かたぎ)勇気のきびしき処あれば、伊賀、伊勢、志摩三ヶ国合はせたるより上なる処あり。古(いにしへ)より秀(すぐ)れたる者もあり。下劣の心底、猶以てかたくなり。然る故に、善に進む事寡ふして悪に従ふ事強し。去る因にて、謀反、一揆の類発する事とも古今多し。飾る気少なき故に、実儀の人も多くして、悪を見て悪と知りて改むる人も有り。中の風俗の国なり。男の言葉好し。是国を治むるには、処々に党多くして、地下人も党を結び、我慢を去る事を尽さずして、傾く事、日を経るべきか。其の党頭を懐け、正道を以て是を教へ、邪儀を誹(そし)らずして恩を加へ、是に談ずるに礼を厚くして威を励まし、之と与に節を考へ、是を示すに節を以てして、而后に善を全く知りて合一すべし。左無くして一応の厳光を以て是を握しくとも、亦。本に帰るべし。其の機気を視るに、其の末発を察し、而后に是をぬくは良将の法也。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1062520/42

【大意】尾張国の風俗であるが、尾張人は先走りがちで、善にも悪にも染まりやすく、善を見れば善に進むが、悪に慣れれば悪に染まる。親しい者に少しでも善い所があれば大袈裟に吹聴するが、悪い所は意見して、今後、悪をなさないよう注意することはなく、一緒に悪を隠し、誰かにばれても、その人の悪い部分を非難して、「悪だが、お前よりはましだ」と言うだけで、悪知恵が働き、自己中心的で、人を下に見て、人の善意を無にし、自分の悪事を隠す人たちで、何事にも根性が無くやり遂げず、ただ大雨や洪水のようにさっと気が変わって、根気が無い。とはいっても勇ましさ溢れるところがあるから、伊賀、伊勢、志摩の三国が束になっても敵わない。昔から優秀な者もいる。下劣な者の性根はかたくななので、善に進む事が少なく、悪に従うことが多い。だから謀反や一揆が昔も今も多い。取り繕おうとは思わないので、(「巧言令色鮮なし仁」の逆で)誠実な人も多く、悪を見て、悪と知って改める人もいる。風俗ランクでは中位の国である。男の言葉は好ましい。この国の国人は、あちこちで党を結ぶ事(集団化すること)が多くて、地下人(位階・官職など公的な地位を持たい庶民)ですら党を結ぶ。我慢しないで、傾くので、時間をかけるのが良策か。党の頭(かしら)を手懐(てなず)けて、正しい道を教え、邪を責めずに恩を与え、話し合いの場では礼を尽くして頭の武勇を褒め、頭と共に時節を考え、時局に応じて示し、その後、改善してから和解すべし。そうせずに、武力で押さえ込んでも、また元に戻ってしまう。その機会を視て、察知し、その後、これらをなすのが優れた将のやり方である。

■『新人国記』
 当国の風俗は、進み走るの気、強くして、善を見ても、悪を見ても、其の方へ移り染まる事、早し。人の上を判するにも、一向に我が親しみをかたんじ、人の善を消し、我が悪を掩(おほ)ふの類多し。又、万事、根の遂ぐる事なく、徒々(ただただ)、大風洪水の俄かになり出(いづ)るが如く、進む事、疾(と)く、退く事、速やかなり。然雖(しかれども)、かたぎ勇気にして、きびしき所もあれば、伊賀、伊勢、志摩三ヶ国合はせも及ばざる上手(うわて)なり。古より秀(ひ)いづる者も有りと見へたり。下劣の心底、猶以てかたくな也。夫れ故、謀反、一揆を発する事とも、古今多し。また、飾る気少なき故に、間に実義の人も出るなり。又、悪をなしても、早く是を懲らして改むる人も有るなり。然たば、中の風俗の国と云ふべし。男の言葉、さわやかにして、よき国なりとぞ。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1062520/90

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