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異類婚姻譚「狐女房」

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 「異類婚姻譚」とは、人が人以外の生物と結婚する話で、狐と結婚するのが「狐女房」で、鶴と結婚するのが「鶴女房」である。「鶴女房」は、鶴の姿で機を織るところを夫に覗き見されて妻(鶴)が去るが、「狐女房」は飼っていた犬に追われて妻(狐)が去る。(中国の「異類婚姻譚」では、男が精気を抜かれて死ぬが、日本の「異類婚姻譚」では、男が死ぬ前に、子孫を残して女が去り、その子孫は、女の残した能力(DNA)や技術(たとえば薬の調合法)で栄えている。)
 「狐女房」とは早春に出会い、晩秋に別れることが多い。これは、狐が、早春に「山の神」から「田の神」に変わる神の先導役(先駆け、先走り)として山から出てきて、晩秋には「田の神」から「山の神」に変わる神の先導役として山に帰ることによるという。

 科学的には鶴や狐が人と結婚することは出来ないはずなので、「異類婚姻譚」には、ギリシア神話に登場する「キマイラ」同様、「宇宙人による生体実験説」もある。ただ、「獣婚」は無理でも、「獣姦」は行われていたようで、法律で規制されている。「国津罪」に「畜犯せる罪」があり、『古事記』(仲哀記)には、「馬婚(うまたわけ)」「牛婚(うしたわけ)」「鶏婚(とりたわけ)」「犬婚(いぬたわけ)」とある。どれも家畜として飼っていた動物ばかりで、「狐婚」はない。(家畜以外の動物との獣姦は、違法ではない?)

★『古事記』(仲哀記)
 殯宮に坐せまつりて、更に国の大ぬさを取りて、生剥、逆剥、阿離、溝埋、上通下通婚、馬婚、牛婚、鶏婚、犬婚の罪の類を種々求ぎて、国の大祓をして、また建内宿禰 沙庭に居て神の命を請ひき。
(仲哀天皇の遺体を、殯(もがり)の宮殿に移し、国中から大量の幣(ぬさ。神に捧げる物品)を集め、生剥、逆剥、阿離、溝埋、上通下通婚、馬婚、牛婚、鶏婚、犬婚の国津罪の穢れを払う大祓の儀式を行った。また、武内宿禰が、沙庭で、神の言葉を受けた。)

 他には、「被差別民説」や「遊女説」が知られている。

(1)被差別民説


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 徐福が始皇帝の圧政から逃れるために多くの中国人と共に日本に逃れてきた。その中国人は、日本全国に配置され、大陸の最新技術(稲作技術、機織り技術)を伝えた。(今では、「天照大神が「日本を豊穣の国にせよ」と豊受大神に命じ、豊受大神が狐たちに稲の種を持たせて、全国各地に派遣した」という話に変えられている。)
 この中国人は、機織りが得意であったので、「秦氏」と呼ばれた。その秦氏が創建したのが伏見稲荷大社であり、境内のおびただしい数の「○○大神」の墓標は、徐福が連れてきた人の名(最初に日本に来た一行=現在の秦氏の祖先)だという。
 この中国人は、最初は「先生」として尊敬されたが、最新技術を伝授された後は、「やっかいな異国人」になった。そして差別された。被差別部落とは、言い換えれば、日本国内の「リトルチャイナ」(中国人集落)である。これを「被差別民古代発生説」と言うが、学者は、「被差別民は、江戸時代に人為的に作られた人々で、古代にはいなかった」として無視している。また学者は、被差別部落に白山神社が建てられたのも「江戸時代から」と言っておられるが、私は「白山」が「しらやま」から「はくさん」に変わった鎌倉時代からだと考えています。

 動物が持つ特殊能力(地震予知も出来る?)は、異国人が持つ最新技術(稲作、機織り、製陶など)に重なる。「被差別民説」では、「異類婚姻」は、被差別民(異国人)との婚姻であり、何かの拍子で正体(被差別民(異国人)であること)が夫にばれる(お里が知れる)と、子の将来を案じて去っていく物語だと解される。

(2)遊女説


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 江戸時代、化粧をして男を惑わすところから遊女を「狐」と呼んだという。これは、「来つ寝」がキツネの語源であるという説に基づく説であろうか?

★足立直郎『遊女風俗姿再見』「きつね美女」(展望社)
 きつねという動物はよく女に化けて男をたぶらかした。で昔から遊女のことを「きつね」という異名で呼んだのである。(中略)ただし、「穴を出て山谷で育つ狐の子」という古川柳について「当時の粋人はこの狐について「来つ寝つ」だから「きつね」と言ったのだと言って、頗るうがった説を述べているのも妙味のある説である。

 「遊女」という職業の女性の話は、江戸時代の話であるから、それ以前は、借金返済か何かの理由での「一定期間のレンタル妻」ということになろう。男が女を愛してしまっても、女には愛がないので、契約期間が過ぎれば去っていく。

 中国の本ではあるが、『玄中記』「狐」に「狐、五十歲能變化為婦人。百歲為美女。(中略)又、為巫神。或、為丈夫、與女人交接。能知千里外事、善蠱魅、使人迷惑失智。千歲即與天通為天狐」(狐は、50歳になると、人間の女に化けられるようになる。100歳では美女に化け、巫(ふ、巫覡(ふげき)、かんなぎ、みこ(神巫、巫女))となる。あるいは、丈夫(人間の男)に化けて人間の女と交接する。千里の外の事を知り、魅惑し、人を迷わせ、惑わせて、正気を失わせる。1000歳になると、天帝に仕え、「天狐」と為す)とある。狐が、美女、あるいは、巫女(遊女の起源は戦国期の「歩き巫女」)に化け、男の精気を吸うために魅惑し、交接する───「遊女」のイメージにぴったり合う。遊郭も稲荷神社も柱は朱色である。

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