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藤長庚『遠江古蹟図会』002「舘山之八景」

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 浜松市民の「かんざんじ」のイメージは、舘山寺温泉、遊園地パルパル、フラワーパーク&動物園、ロープウェイと大草山(オルゴールミュージアム、昇竜しだれ梅)、「浜名湖かんざんじ温泉灯篭流し花火大会」などと「観光地」であり、「舘山(たてやま)の秋葉山舘山寺(かんざんじ)」という「聖地」「聖域」といった感覚に欠けている。ましてや遊園地パルパルが「堀江城跡」だとは、城郭マニアでなければ思いつかない。

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舘山寺(かんざんじ)は、舘山(たてやま)にある寺である。
牛岩の和歌は空海(弘法大師)の和歌。そしてその空海による弘仁元年(810年)開山の古刹が舘山寺である。
明治維新の廃仏毀釈で廃寺。秋葉山秋葉寺の末寺となって再生し、現在は「秋葉山舘山寺」と称している。
以前の住所は、
 ──敷智郡堀江村
 ──浜名郡北庄内村堀江(「堀江県」は万石事件で廃県→静岡県に編入)
であったが、現在(昭和40年(1965年)以降)の住所は、
 ──静岡県浜松市舘山寺町
 ──静岡県浜松市西区舘山寺町
と、「舘山寺」は町名になっている。
 以前は風光明媚な静かな場所であったろうが、昭和33年(1958年)に「かんざんじ温泉」が開湯して、一気に温泉街として賑やかになった。

 さて、「八景(はっけい)」とは、ある地域における8つの優れた風景をいうが、自由に決めたものと、次の形式にあてはめたものがある。

晴嵐:春、または、秋の霞。
晩鐘:沈む夕日と、寺院の鐘楼。
夜雨:雨の夜の風景。
夕照:夕日と、夕日を受けて照る事物。
帰帆:夕暮れ時に舟が一斉に港に戻る風景。
秋月:秋の月と、それが水面に反射する風景。
落雁:飛ぶ雁の風景。
暮雪:雪が積もった山の夕方の風景。

 山間部では「帰帆」に欠けるし、浜松市は温暖なので「暮雪」に欠けるが、「八景」はある。

名称舘山八景     
制定:享和3年以前     
晴嵐琴堂の晴嵐    琴の音を  調べかえてや  青嵐
晩鐘宿芦寺晩鐘    入相の   かねに散りけり 山桜
夜雨水神夜雨     はらはらと 松の落葉や   夜の雨
夕照赤巌の夕照    水鳥の   入日こがるゝ  岩根かな
帰帆今切帰帆     長閑さや  入江に帰る   真帆片帆
秋月舘山寺の秋月   見渡せば  波にさやけき  海の月
落雁間渡落雁     雨雲の   間を啼き連れて 渡る雁
暮雪大草山暮雪    見亡う   洲先のさぎや  雪の暮

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浜名湖八景         かんざんじ八景
  ?(情報募集中)              ?(情報募集中)
・大草山展望台           鶏冠岩より眺める浜名湖の夕日
・浜名湖ガーデンパーク    内浦より見るロープウェイと舘山寺
・弁天島海浜公園       大草山より見る浜名湖
・弁天島浮見堂        舘山寺の名月
・新居今切口         富士見岩より眺める細江・引佐
・浜名湖ウォッチングロード  聖観音より見る舘山寺
・三ヶ日瀬戸         ?(情報募集中)
・東名浜名湖サービスエリア  ?(情報募集中)

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名称浜名湖八景   浜名八景   遠江八景   細江八景
制定:?(情報募集中)明治14年     平成26年   明治30年
晴嵐:高師青嵐    高師晴靄   潮見晴嵐   引佐晴嵐
晩鐘:摩許耶寺晩鐘  浜名長橋   五山晩鐘   長楽寺晩鐘
夜雨:大崎夜雨    礫島松風   瀬戸夜雨   唐洲崎夜雨
夕照:弁天島漁火   象洲漁火   弁天夕照   根本山夕照
帰帆:猪鼻湖帰帆   迫門奇巌   細江帰帆   細江帰帆
秋月:舘山寺秋月   館山秋月   舘山秋月   舘山秋月
落雁:細江湖落雁   本阪紅葉   寸座落雁   松崎落雁
暮雪:浜名慕雪    鷲津桜花   浜名暮雪   尉ヶ峯慕雪

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名称佐鳴八景   天竜川八景   浜松八景   光明八景
制定:天保年間   明治中半    明治30年   昭和34年
晴嵐:三ッ山晴嵐  鹿島橋春霞   愛宕山晴嵐  天竜春水
晩鐘:西湖山晩鐘  弁財天奇巌   鴨江晩鐘   秋葉朝靄
夜雨:大山夜雨   西渡峡松風   停車場夜雨  福田午潮
夕照:大屋橋夕照  池田橋夕照   馬込夕照   松木島鵆
帰帆:北浦帰帆   石積船帰帆   堀留帰帆   浜名暮帆
秋月:少林山秋月  掛塚湊松籟   古城秋月   山水夏月
落雁:大田落雁   西川渡紅葉   森田落雁   富士秋雲 
暮雪:大良暮雪   大千瀬清流   常寒山暮雪  三方原朝露

❆「宇布見八景」については、制定年も個々の八景も不明。(情報募集中)
❄明治中期の依田学海選定「浜名十二勝」も有名。
❄「浜名湖八勝歌」という唱歌もある。

 藤長庚『遠江古蹟図会』って、現在伝わっている伝説について詳しく書かれているので参考になりますが、時々、現在伝わっているのとは別の話になっているので驚くことがあります。
 たとえば、舘山の絵。水神松も西行岩も正しい位置に描かれていますが、千貫松? 千貫松は猪鼻瀬戸付近のはず・・・。

■参考サイト
・「曹洞宗 秋葉山 舘山寺」公式サイト
http://kanzanji.net/
・「浜名湖かんざんじ温泉観光協会」公式サイト
https://www.kanzanji.gr.jp/

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