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遠州七不思議

 「遠州七不思議(えんしゅうななふしぎ)」とは、遠州=遠江国(静岡県西部地方)に伝わる七つの不思議な伝説のことであり、その七つの不思議は、遠州各地で異なり、合わせると7以上になる。

 兵藤庄右衛門(藤長庚)遠江古蹟図会(1803年)では、「遠州七不思議」を清明塚、三度栗、佐倉の池(桜ヶ池)、海の鳴(波小僧)、天狗火、夜泣き石、無間の鐘の7つとしながらも、異説があるとしている。

■兵藤庄右衛門(藤長庚)『遠江古蹟図会』「三度栗」(1803年)
当国不思議は、清明塚、三度栗、佐倉の池、海の鳴、天狗火、夜啼石、無間の鐘と古来より云ひ伝ふなり。種々外に説ありて、七不思議も一定ならず。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2538219/35

 小島蕉園蕉園渉筆(別名『蕉園遠州奇談』。1825年)では、佐倉邑神会(桜ヶ池のお櫃納め)、天狗火、三沢の三度栗、中山の夜啼石、相良の波響(波小僧)、日坂の湧井(日坂宿の弘法井戸)、高脚巖(『遠江古蹟図会』では「足高岩」。現在の愛鷹岩)の7つとしている。(蕉園渉筆』では、聞き間違えなのか、「見付天神の人身御供」が「日坂駅天神の人身御供」になっていたり、「新居二宮の飛び神様」が「新井薬師の飛び神様」になっていたりするので注意。)

■小島蕉園『蕉園渉筆』「七奇」(1825年)
州人称七奇者、其一為佐倉邑神会。邑有古池。昔永空阿沙黎、待弥勒出現、自投為竜之処。傍有旧祠。曰佐倉明神。秋彼岸、以中日祭焉。遠近奉飯器、祈疾病、若他所求、廟令炊礱飯盛之、享於神前。土人数輩、斎七日、午時来撒之。裸体抱之投池中、游泳至于水心、両手環器、 圧而竦脚、俯伏、器沈水底。然後又游泳而去。随器数如此者数矣。伝称、歴三、五日浮者、其所祈有応。即時浮者無験。
 其二為天狗火。暗夜飛空中。雨夜最多。色深赤。一火忽然散満於四野。
 其三為三沢三度栗。夏秋再熟、冬日雪中亦熟。
 其四為中山夜啼石。石当路而立、夜呼行人悲哭。
 其五為相良波響。不由風、而東西移響。
 其六為日坂湧井。昔、僧・空海、過駅渇乞水、駅中無井。一婦人数里搬運。空海擲錫於其舎前、寒水忽然湧出。
 其七為高脚巌。在波津東南洋中、出水丈許。濶可布十筵。祈雨有応。舟而上之、若人溺之巨涛立狂、為之所没、必有雨濯其穢。
 可謂皆奇矣。

 そもそも「遠州七不思議」は、1804年に滝沢馬琴が『小夜の中山宵啼碑』を出版した頃に決められたもので、夜泣石が含まれていれば、あとの6つは何でも良かったらしい。

「遠州七不思議」=「夜泣石」+「桜ヶ池」など有名な6つの伝説

 子供に伝える時は、地元の伝説を1つ入れたという。(小島蕉園は相良の波津陣屋の代官として赴任してきた人物であり、地元の人に聞いたら、地元相良の愛鷹岩がインされていて、おまけに「遠州灘の波小僧」が「相良の波小僧」とされていたようです。)

郷土愛「遠州七不思議」=「夜泣石」+地元の伝説1つ+有名な5つの伝説

不思議なのは、遠州では最も有名な「秋葉山の天狗」が入ってないこと。(ちなみに、秋葉山三尺坊、春埜山太白坊、光明山笠鋒坊、大日山繁昌坊、小笠山三広坊、奥山半僧坊、雲林寺思案坊を「遠州七天狗」といいます。)
天狗は実在する修行僧であって「不思議」ではないということでしょうか?

波小僧(「浪小僧」とも表記。遠州灘各地)
椀貸地蔵尊(榛原郡吉田町細江矢の口)
千種の釜(浜松市天竜区横山町千草)
椎ヶ脇渕の竜神(浜松市天竜区二俣町西鹿島)
能満寺のソテツ(榛原郡吉田町片岡の能満寺)
子生まれ石(牧之原市西萩間の大興寺)
愛鷹岩(牧之原市波津)
天狗の火(御前崎市など)
桜ヶ池の大蛇(御前崎市佐倉)
三度栗(菊川市三沢など)
晴明塚(掛川市大渕藤塚)
弘法井戸(掛川市日坂)
夜泣き石(掛川市佐夜鹿「小夜(佐野郡)の中山」)
無間の鐘(掛川市東山の粟ヶ岳)
霧吹き井戸(掛川市掛川の掛川城)
悉平太郎(磐田市見付の矢奈比賣神社)
京丸牡丹(浜松市天竜区春野町小俣京丸)
池の平の幻の池(浜松市天竜区水窪町池の平)
洞穴の大蛇(浜松市浜北区根堅の岩水寺)
柳井戸(浜松市北区引佐町井伊谷)
はたごの池(浜松市北区引佐町井伊谷)
身代わり地蔵(浜松市中区八幡町の萬福寺)
大鐘婆さ火(掛川市西大渕)
お松火(浜松市東区松小池町、浜松市東区笠井上町のお松堂)
飛び神様(湖西市新居町の大神神社(現・二宮神社))
片葉の葦(遠州各地。約50ヶ所)

波小僧

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なみまるとふうちゃん
「平成26年度、市政10周年を記念して御前崎市のマスコットキャラクターが誕生しました。 なみまるとふうちゃんです。 遠州七不思議にある波小僧伝説をモチーフに考えられたデザインに、全国から愛称を公募。 なみまるが応募総数310点で採用者4名、ふうちゃんが応募総数306点で採用者1名に決定させていただきました。
キャラクター秘話
浜岡砂丘に棲む「なみまる」は、恋人の聖地にも選ばれている潮騒の像付近に棲む「ふうちゃん」と出会い友達になる。 二人は御前崎市の良さをPRするために日本全国、そして世界を駆け巡るという野望を持っている。 「なみまる」は健康御利益、ふうちゃんは恋愛成就のパワーを秘めているといわれている。」(御前崎市公式サイトより)

■参考記事:
『日本伝承大鑑』「波小僧・浪小僧」
https://japanmystery.com/sizuoka/namikozou.html

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