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徳川家康の和歌と辞世と遺訓


1.徳川家康の辞世


『徳川実記』によれば、徳川家康の辞世には2首ある。

辞世①
嬉やと二度(ふたたび)醒めて一眠り 浮世の夢は暁の空

 死期が近づいている。「明日の朝は目覚めないかも」と毎晩思いながら床についている。そして朝が来て、「今日も目覚めた。まだ生きている。嬉しい」と思い、安心して、「もう一眠り」と二度寝する。この世の夢は、美しい暁(夜明け、明け方)の空みたいである。【今日もまた朝を迎えられた喜び】

※辞世ですので、歌意は「嬉しい」というプラス思考ではなく、「悲しい」「寂しい」というマイナス思考になるはずですが・・・。初日の出を見に行くと、「太陽が顔を出した!」と思った数分後には、もう全体が出て、「太陽の動きって早いな」と思います。「浮世の夢は暁の空」は、すぐに失われる美しい朝の風景であり、「すぐに失われる」=「人生は短い」ということを表しているのでしょうか?
 大河ドラマは、48回もある「長い」物語です。「暁の空」と言われると、「早朝」=人生の始まり(オープニングテーマのタイトルだけに、ドラマの始まり)のイメージですが、48回終わってみると、「長いと思ったけど短かった」。同様に、人生も終わる時に振り替えると、「長いようで短かった。パッと煌めいて終わる暁の空みたい」と思うのかな。

辞世②
先に行くあとに残るも同じこと 連れて行けぬをわかれぞと思う

 先に逝く(死ぬ)のも、死ねずに生き残されるのも、(いつかは死ぬので)同じことである。死出の旅に連れて行かれないこと(同時に死ねないこと)を「別れ」だと思う。【お別れだ。1人で行く。同時に死んだら「別れ」にならない。殉死はするな。】

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