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【超深読み】大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(第37回)「オンベレブンビンバ」

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 ──オンベレブンビンバ、オンベレブンビンバ。

 北条一家の団欒で、突如、北条時政が大姫に教わった「幸せになる真言」を唱えた。今夜、謀反人として北条義時に成敗されるかもしれないのに、「お前たちは幸せに」と真言を唱える北条時政に、視聴者は涙した。
 これだと暗いドラマになってしまうので、脚本家は笑いに変えた。

北条政子「ウンダラホンダラゲー」
北条義時「ピンタラポンチンガー」
北条時房「プルップ・・・」
北条実衣「ウンタラクーソワカー・・・ボンタラ、ポンタラよ!」
5人で「ポンタラクーソワカー」の大合唱。
ナレーション「正しくは『オンタラクーソワカー』である」
北条実衣「思い出せるものね」(いや、違うって;)
北条政子「ご苦労さまでした。父上の楽しそうな顔、久々に見た気がする」
(私としては、仲の良い北条政子と北条実衣を久々に見た気がする。)

 表面的な笑いは、奇妙な言葉の面白さ、言い方の面白さである。深い笑いは、北条一家は、大姫も含め、記憶力が低いということである。「オンタラクソワカ」の意味が「幸せになる真言」だというのは大姫の記憶違いであり、実は「記憶力を高める真言」だから笑えるのである。


 さて、今回の深読みポイントは、
「オンベレブンビンバの笑い所」ではなく、「魚の小骨」である。


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今回、源実朝は、
・側近が思い人の北条泰時から阿野信元に替えられて悲しんだ。
・坊門千世が魚の小骨を取るのを拒んだ。

 京都から1人で来て、都人には「鬼」に見えるという関東武士の間に放り込まれた公家・坊門千世(藤原北家隆家流。家名の由来は信隆の私邸が七条坊門小路に面していたこと。北条時政の娘が政子であるように、坊門信清の娘であるので信子とも)は孤独だったであろう。頼れるのは夫・源実朝しかいないが、その夫・源実朝は魚の小骨を取らせてくれない。「小骨を取らせてあげる」ということは、その人を信用している、さらには頼りにしていることを意味する。私が源実朝だったら、小骨を取ってもらうし、京都のことを聞いてあげたり、蹴鞠の腕(足?)を披露したり、一緒に歌を詠んだりしてかまってあげるけどね。(実際の源実朝は、結婚した坊門千世から、京都での和歌の隆盛を聞いて、和歌に興味を持ったというから、会話はしていたと思う。)

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 坊門千世は、思い切って、魚の小骨を取らせてくれなかったことを義母・北条政子に相談するが、記憶力の悪い北条家の北条政子は、
「源頼朝も魚の小骨が嫌いだったのよ。やっぱ親子よねえぇ」
と妙なことは覚えていた。「坊門千世に京都の話が聞ける」とワクワクしてそばにいた伊賀のえが、すかさず、
「そうじゃないだろ。今日は坊門千世の話を聞く会だろ」
と突っ込んだ。この言葉は、表面的には「今日は坊門千世に京都の話を聞く会だろ!」という怒りであるが・・・。私なら「料理人は源実朝の好みを知っているはず。小骨を取らずに出した料理人をやめさせろ」と言うが、伊賀のえは鋭い。問題は「料理人が魚の小骨を取って出さなかったこと」ではなく、「源実朝が坊門千世に魚の小骨を取らせなかったこと」であることだと見抜いた。北条政子は、
「夫婦仲はいいの? 早く孫の顔が見たいわ」
と言うべきだったのである。

坊門千世が鈍感な北条政子に相談したのは失敗だった。
──では、誰に相談すればよかったのか?
京都から1人で来て、都人には「鬼」に見えるという関東武士の間に放り込まれた公家がもう1人いる。
──牧りく(藤原北家隆家流。家名の由来は大岡牧を領したこと)である。
(坊門千世と牧りくの違いは、夫の態度の違い。北条時政は、牧りくにゾッコンで、気遣っている。)
坊門千世が、自分を京都から呼んだ同族(藤原北家隆家流)の牧りくに相談していれば、
「実は平賀朝雅を鎌倉殿にしようと考えてるの。協力してくれたら京都に帰してあげる」
と言われたであろう。平賀朝雅が鎌倉殿になり、坊門千世と源実朝は京都に住み、源実朝は歌人として長生きしたことであろう。

・牧りくは、平賀朝雅を鎌倉殿にしようとした。
・源実朝が暗殺されると、阿野信元は鎌倉殿になろうとした。

──なぜ鎌倉殿争奪戦が起きるのか?

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