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鳳来寺の仙人

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 ──鳳来寺(ほうらいじ)山の利修(りしゅう)仙人

そう記憶していましたが、山名にも仙人名にも複数あるようです。
 また、左手に持っている経典について、真言宗では『理趣経』、天台宗では『法華経』とする。

(1)山の名


①霧降(きりふ)山:山頂の桐の巨木に竜が棲み、霧を吐くと大雨に。

多分、「霧降山の(山麓は、よく霧がかかるが)山頂に霧がかかったら大雨になり、川が氾濫する」という民間気象予想があったのでしょう。

②桐生(きりふ)山:山頂に桐の巨木「神代桐樹」が生えていた。

善政が行われると現れるという鳳凰が、推古天皇の善政により現れました。
この山に鳳凰が現れた理由は、
1)神代桐樹があったから(鳳凰は桐の木にのみ止まる)
2)薬師如来の聖地だから(神代桐樹の空洞に置かれた像が光っていた)
だという。鳳凰が竜を神代桐樹から追い出し、竜が原因の川の氾濫はなくなり、空洞から無事に仏像を取り出せた。

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巨木の空洞の争い(取り合い)というと、『おんな城主 直虎』で一躍有名となった気賀の細江神社のクスの巨木の空洞を巡る大蝙蝠と大蛇の争いを思い出す。鳳凰と竜の争いの原型であろうか。

③霧生(きりふ)山 / 煙巌(えんがん)山

竜が去ったが、霧は立っていた。しかし、よく見ると、霧ではなく、天武天皇の御世に入山した利修仙人が焚く護摩の煙であった。

■鳳来寺岩本坊長乳『鳳来寺興記』
一、煙巌山事 本堂西当峯隔有山。仙人護摩修岩窟。護摩煙巌着于今有之故云爾。又初当彼岩窟常烟出故煙巌山名いへり。仙人住此処秘密護摩修。仙人所住峯多中肝要峯故当寺山号。天武御宇、白鳳壬申仙人煙巌山入見へたり。

④しょうがく(勝岳 / 簫楽)山

周囲の山より勝(まさ)る名山なので勝岳山、利修仙人が和楽器の簫を吹いていたので簫楽山と名づけられた。また、利修仙人のことを勝岳仙人とも、簫楽仙人ともいう。

⑤現在の呼称:鳳来寺(ほうらいじ)山

利修仙人が建てた寺は、利修仙人が鳳凰に乗って往来することから「鳳来寺」と名づけられ、「鳳来寺」がある山であるので、「鳳来寺山」と名づけられた。

■鳳来寺岩本坊長乳『鳳来寺興記』
一、鳳来寺云事
 斉明天皇比、利修百済国渡。帰朝時乗鳳来玉ふ。又、文武帝時、仙人参内事。其時乗鳳吹簫往来故、鳳来寺云佳名賜。乗鳳故帝鳥導仙人召云へり。又、簫吹故、臣下簫楽仙人呼云へり。

厳密に言えば、鳳来寺山には、「鳳来三峯」とも「鳳来七山」とも呼ばれる峯(小ピーク)があり、煙巌山は、鳳来寺山の西峯のことである。ピークの鳳来寺山の別名は「瑠璃山」である。
また、現在の総称は「鳳来寺山」であるが、鳳来寺創建前の総称は「桐生山(霧降山)」であった。

※「鳳来七山」
・桐生山(霧降山):旧総称。
・煙巌山:鳳来寺の山号に採用。三密峯。陀羅尼山。
・白 山:白山権現(奥の院)。
・瑠璃山:瑠璃の壷を埋める。最高点。伊王峰。現在の総称「鳳来寺山」。
・勝岳山:利修仙人が入定。
・大黒山:利修仙人作の大黒天像。
・明星山:利修仙人が最初に入山。入山時に星が輝いたという。

※「鳳来寺三所権現」
・薬師如来
・地主権現
・白山権現

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