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2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(第32回)「災いの種」

タイトルを見た時、「災いの種」とは、源頼家のことだと思った。
『吾妻鑑』「建仁3年(1203年)9月5日」条に「將軍家御病痾少減、憖以保壽算給」(將軍家の御病痾少減し、憖に以て壽算を保ち給ふ)とある。

・病痾(びょうあ):病気。特に、こじれて長引く病気。
・憖(なまじい):①中途半端なさま。②しなくてもいいのにするさま。
・寿算(じゅさん):いのち。生命。寿命。

「憖以保壽算給」の訳には、
①(「憖」を「中途半端なさま」として)源頼家には1日でも早く完全に回復してもらいたいが、中途半端にも少しだけ回復して生命を維持している。
②(「憖」を「しなくてもいいのにするさま」として)源頼家は回復しなくてもいいのに(死ねばいいのに)、少し回復しちゃって、まだ生きている。
があり、当然、①が正しい訳であるが、『吾妻鑑』では、源頼家を暗君として描いているので、②の意味も含めて書いているのかもしれない。
 実際、源頼家が死ぬものとして、3日前に比企一族と一幡を討って、北条一族と千幡を中心とする体制を築きつつあり、朝廷への報告も済んでいる。
 「源頼家の回復」は「災いの種」であり、源頼家が全快する前に、寝ている間に起きたことを知られる前に、何とかしなければならないが、憖に寿算を保ち給い、比企一族の滅亡と一幡の死を知られてしまった。

■『吾妻鑑』「建仁3年(1203年)9月5日」条
建仁三年九月大五日庚午。將軍家御病痾少減、憖以保壽算給。而、令聞若君并能員滅亡事給。不堪其欝陶、「可誅遠州」由、密々被仰和田左衛門尉義盛及新田四郎忠常等。堀藤次親家爲御使、雖持つ御書、義盛深思慮、以彼御書献遠州。仍虜親家、令工藤小次郎行光誅之。將軍家、弥御心勞云々。

(建仁3年(1203年)9月5日。将軍(源頼家)の病気は、少しだけ回復し、辛うじて命を長らえていた。そして、若君(一幡)や比企能員が滅亡したことを聞いた。その欝陶に堪えられず、「北条遠江守時政を誅殺せよ」と内々に和田義盛と仁田忠常に命令した。堀親家を使者として文書を持って行かせたのだが、和田義盛はよく考え、その文書を北条時政に渡した。そこで堀親家を捕らえ、工藤行光に殺させた。将軍(源頼家)は、いよいよ心配したという。)

※仁田忠常は、加藤景廉に討たれたというが、『鎌倉殿の13人』の仁田忠常は、一幡の乳母夫であったので、進退を決められず、自殺した。

「災いの種」は源頼家で、今回のラストシーンは、源頼家が殺されるシーンかと思いましたが、「災いの種」は一幡でしたね。ラストシーンは、もう1つの「災いの種」である善哉に比企尼が「北条を許すな」と言い含めるシーンでした。

現在は建仁3年(1203年)である。
・源頼家     :1182年生まれの22歳⇒出家して修善寺で軟禁
・源頼家の弟・千幡:1192年生まれの12歳⇒第3代将軍・源実朝
・源頼家の子・一幡:1198年生まれの  6歳⇒「比企氏の乱」で死亡
・一幡の弟・ 善哉:1200年生まれの  4歳⇒1211年に出家して公暁

『鎌倉殿の13人』の俳優の2022年での実年齢(数え年)。
・源頼家     (22歳)⇒金子大地(1996年生まれの27歳)
・源頼家の弟・千幡(12歳)⇒嶺岸煌桜(2011年生まれの12歳)
・源頼家の子・一幡(  6歳)⇒相澤壮太(2014年生まれの  9歳)
・一幡の弟・ 善哉(  4歳)⇒長尾 翼(2014年生まれの  9歳)

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源頼家は、次回に死ぬのかな。

次回、「死相の面」が登場する!
(300円払って宝物殿に入る人が増えそうだ。)

※「岡本綺堂『修禅寺物語』 」
https://note.com/sz2020/n/nd9edb720fa75

一幡はトウに殺されたようですね。

※「讃岐局(元若狭局)&一幡親子の最期 」
https://note.com/sz2020/n/n97dd122eee14


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▲北条時政の子(『鎌倉殿の13人』の設定)

北条四郎時政┬長男・三郎宗時    (片岡愛之助)  :母・伊東祐親の娘
(坂東彌十郎) ├長女・政子=源頼朝室 (小池栄子)   :母・伊東祐親の娘
      ├次男・江間小四郎義時 (小栗旬)       :母・伊東祐親の娘
      ├次女・実衣=阿野全成室(宮澤エマ)   :母・伊東祐親の娘
      ├三女・ちえ=畠山重忠室(福田愛依)   :母・?
      ├四女・あき=稲毛重成室(尾碕真花)   :母・?
      ├三男・五郎時連→時房 (瀬戸康史)      :母・?
      ├?女・きく=平賀朝雅室(八木莉可子)  :母・りく
      ├?女・?=滋野井実宣妻(?):母・りく=牧宗親の妹
      ├?女・?=宇都宮頼綱室(?):母・りく=牧宗親の妹
      ├四男・遠江左馬助政範 (?):母・りく=牧宗親の妹
      ├?女・?=坊門忠清室(?):母・不明
      ├?女・?=河野通信室(?):母・不明
      └?女・?=大岡時親(牧宗親の子)室(?):母・不明

北条義時の子(『鎌倉殿の13人』の設定)

北条義時──┬長男・金剛→頼時→泰時(坂口健太郎):母・伊東祐親の娘
(小栗旬)    ├次男・朝時(?):母・比奈=比企朝宗の娘
       ├三男・重時(?):母・比奈=比企朝宗の娘
       ├長女・竹殿=大江親広室(?):母・比奈=比企朝宗の娘
       ├四男・有時(?):母・?=伊佐朝政の娘
       ├五男・政村(?):母・のえ=伊賀朝光の娘
       ├六男・実泰(?):母・のえ=伊賀朝光の娘
       ├七男・時尚(?):母・のえ=伊賀朝光の娘
       ├次女・?=一条実雅室(?):母・のえ=伊賀朝光の娘
       ├?女・?=一条実有室(?):母・不明
       ├?女・?=中原季時室(?):母・不明
       ├?女・?=一条能基室(?):母・不明
       ├?女・?=戸次重秀室(?):母・不明
       └?女・?=佐々木信綱室(?):母・不明

源頼朝の子(『鎌倉殿の13人』の設定)

源頼朝──┬千鶴【溺死】   (太田恵晴)   :母・八重=伊東祐親の娘
(大泉洋)   ├長女・一幡(大姫)(南沙良)    :母・政子=北条時政の娘
      ├長男・万寿→頼家 (金子大地)   :母・政子=北条時政の娘
      ├能寛→貞暁    (?)           :母・?=常陸念西の娘
      ├次女・三幡(乙姫)(太田結乃)   :母・政子=北条時政の娘
      └次男・千幡→実朝 (柿澤勇人)   :母・政子=北条時政の娘

源頼家の子(『鎌倉殿の13人』の設定)

源頼家───┬長男・一幡    (相澤壮太):母・せつ =比企能員の娘
(金子大地)  ├次男・善哉→公暁 (寛一郎) :母・つつじ=賀茂重長の娘
        ├三男・千寿丸→栄実(?)   :母・?=一品房昌寛の娘
        ├長女・竹御所   (?)   :母・?=源義仲の娘
        └四男・?→禅暁  (?)   :母・?=一品房昌寛の娘

▲「鎌倉殿の6人」(源頼家の「近習六人衆」)のメンバー

①北条五郎時連  (瀬戸康史):「近習六人衆」のリーダー
②小笠原弥太郎長経(西村成忠):「源頼朝の弓馬四天王」小笠原長清の子
③比企三郎宗朝  (Kaito)    :比企能員(佐藤二朗)の三男
④比企弥四郎時員 (成田瑛基):比企能員(佐藤二朗)の四男
⑤中野五郎能成  (歩夢)  :藤原助弘の子(娘婿?養子?)
⑥北条太郎頼時 (坂口健太郎):北条義時(小栗旬)の長男

▲「13人の合議制」のメンバー

○政所&問注所:文官
【政策担当】①大江広元 (栗原英雄)
【外務担当】②中原親能 (川島潤哉) 【三幡の死(1199)。京都へ】
【財務担当】③二階堂行政(野仲イサオ)
【訴訟担当】④三善康信 (小林隆)

○侍所:武官(宿老、有力御家人)
⑤【梶原派】梶原平三景時 (中村獅童)【1200年自害。享年60】
⑥【北条派】足立遠元   (大野泰広)
⑦【比企派】安達藤九郎盛長(野添義弘)【1200年死没。享年66】
⑧【比企派】八田知家   (市原隼人)    
⑨【比企派】比企能員   (佐藤二朗)1203年暗殺さる。享年不明】
⑩【北条派】北条四郎時政(坂東彌十郎)
⑪【中立派】北条小四郎義時 (小栗旬)
⑫【北条派】三浦新介義澄   (佐藤B作)【1200年死没。享年74】
⑬【北条派】和田小太郎義盛(横田栄司)

▲NHK公式サイト『鎌倉殿の13人』
https://www.nhk.or.jp/kamakura13/

▲参考記事

・サライ 「鎌倉殿の13人に関する記事」
https://serai.jp/thirteen
呉座勇一「歴史家が見る『鎌倉殿の13人』」
https://gendai.ismedia.jp/list/books/gendai-shinsho/9784065261057
・富士市 「ある担当者のつぶやき」
https://www.city.fuji.shizuoka.jp/fujijikan/kamakuradono-fuji.html
・渡邊大門「深読み「鎌倉殿の13人」」
https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabedaimon
・大迫秀樹「「鎌倉幕府の謎」源頼朝と北条義時たち13人の時代」
https://gentosha-go.com/category/t966_1・Yusuke Santama Yamanaka 「『鎌倉殿の13人』の捌き方」
https://note.com/santama0202/m/md4e0f1a32d37
・刀猫    「史料で見る鎌倉殿の13人」
https://note.com/k_neko_al/m/m0f7e5011a2ac

▲参考文献

・安田元久 『人物叢書 北条義時』 (吉川弘文館)       1986/  3/  1
・元木泰雄 『源頼朝』       (中公新書)           2019/  1/18
・岡田清一 『日本評伝選 北条義時』(ミネルヴァ書房)2019/  4/11
・濱田浩一郎『北条義時』      (星海社新書)       2021/  6/25
・坂井孝一 『鎌倉殿と執権北条氏』 (NHK出版新書)   2021/  9/10
・呉座勇一 『頼朝と義時』     (講談社現代新書)2021/11/17
・岩田慎平 『北条義時』      (中公新書)           2021/12/21
・大迫秀樹 『「鎌倉殿」登場!』  (日本能率協会)    2021/12/22
・山本みなみ『史伝 北条義時』   (小学館)               2021/12/23
・山本みなみ『史伝 北条政子』   (NHK出版新書)    2022/  5/10
・坂井孝一 『鎌倉殿をめぐる人びと』(NHK出版新書) 2022/  7/10

・毛利豊史「源実朝試論」
https://core.ac.uk/download/pdf/80536497.pdf



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