公開シナリオ『インフルエンサー』

炎上も『祭』かもなぁと思った話。
女　
男　

女　おまたせぇ。
男　サンキュー！　悪いな買ってきてもらっちゃって。
女　気にしないで。バレたら大変でしょ？
男　案外バレないもんだよ。
女　この前サインの列できたの誰？　インフルエンサーさん。
男　申し訳ない。
女　そんなのより、いいの？　インフルエンサーさんがお祭りの焼きそば、たこ焼きで。
男　雰囲気が味を増幅させるんだよ。わっしょい、わっしょいってね。
女　そんなもんかなぁ。
男　そう言うもんだよ。うん、伸びた麺と祭囃子がマッチするなぁ。
　　まっ、僕の仕事も祭りみたいなもんさ。
女　祭り？
男　そう。派手な神輿や山車（だし）を用意して、自然と不特定多数の人間が集まってくる。それが注目されてるんだよ。
女　そっか。
男　あぁ、プラスチックカップのビールもいいねぇ。
女　去年非難したレストランも同じだったのかな？
男　えっ？
女　『話題のレストランを忖度なしで評価してみた』だっけ？　味も、サービスも最低。特にメインで出されたワインが相性最悪だっけ？
男　そうだったかな？
女　あの日、あなたはワインを飲んでいなかった。
男　それはない。なんでわかるんだよ。
女　私が接客したから。レシートもあるわ。
男　はっ！？
女　父さんが大切にしたお店、なくなっちゃった。
男　……
女　実際の祭りは土地の歴史、神輿、それを背負う人の信用で成り立ってるのに。
不安定な土台に立っててどこの誰かが怪我する可能性なんか考えてないんでしょうね。
男　そう、だな。
女　ご飯冷めちゃうよ？　それとも、私の持ってきた食べ物だから怖くなっちゃった？
　　お祭り野郎さん。