アルバイトは編集経験「有り」か?(編集ソフト編)

出版社の求人の募集要項によく書いてあるのがこれ。「書籍編集3年以上経験のある方歓迎!」

僕が出版社のアルバイトを始めた一番の理由が「中途で入るときに面接で経験アリと言えるから」だ。アルバイトでも3年続ければある程度のことはわかるだろうと思っていた。


しかしアルバイトを始めてすぐにわかるのは、社員の編集者と編集補助のアルバイトでは全然やることが違うということだ。編集補助といっても編集はしない。電話対応だったり、本の発送作業だったり、ホワイトボードの日付を書き換えたり、エアコンの温度を調整したり。


具体的に何が違うかというと「編集ソフト」を扱うか扱わないか。これは大きいだろう。

よく編集者に頼まれた。「Illustratorのデータをディスクから抜きたいんだけど・・・」。僕たちアルバイトはよくCDを渡される。アルバイトに渡せばデータの引き抜きをやってくれると思っているのだ。でもIllustratorを使って僕たちが仕事するわけじゃない。実態はよくわからない。

会社のデスクトップにはAdobeのソフトが入っているので、僕はたまにそれを開いてみた。Illustratorを開けても何も起こらない。両サイドにはアイコンがびっしり詰まっているが、クリックしても反応しない。


現在、僕は毎日Adobeのソフトを使っている。今になって思うのが

「独学で編集ソフトを覚えるのは、無理だろう」ということだ。

本屋には「初めてのIllustrator、Photoshop」みたいな本がたくさん置いてある。読んだことないけど、多分参考書みたいになってるんだろう。

編集の経験がなくても自分でAdobeのソフトを購入して家で自習すれば面接で「編集ソフト触れます」と言える、、、僕はそう思っていた。しかし今の会社に入って仕事で使うようになり、初心者が編集ソフトを使いこなすには「慣れるしかない」ことを知った。

YouTubeにも講座的な動画が何本もあるが、結局は身に入らないだろう。というのも、「実際に自分で原稿を書き、その原稿に沿った写真があり、原稿と写真を組み合わせて1つの記事にする」という実践を踏まえて始めて、編集ソフトの仕組みが理解できるからだ。

上記に独学で覚えるのは無理と書いたが、その理由に「誌面が出来上がっていく過程を楽しめる。誌面を意識すると色んなことが繋がり出す」もあるだろう。

僕は雑誌の編集でソフトを使っているが、編集中は文字や写真が「生」の状態で画面に散らばっている。それらを1つにまとめるには、体が勝手に動き出すくらいの「ツールの叩き込み」が必要だ。

出版社にはそれぞれのルールがある。たとえソフトの参考書でボロボロになるまで勉強しても、結局はその会社のレイアウトや書式に慣れるには時間がかかるだろう。逆に出版社で3年くらい編集ソフトに携われば、別の出版社に行っても「何が分からないかが、わかる」状態にはなっているだろう。これがどの募集要項にも「編集経験3年以上歓迎」と書いている理由だ。中途にいちいち編集ソフトのイロハを教える時間は割きたくない。

かといって、編集ソフトを仕事で使うチャンスがバイトにないなら、いつまでたっても「編集ソフト経験アリ」と言えないじゃないか、ということになる。

その通り。だから面接では少し濁しておこう。「IllustratorやPhotoshopは少し使ったことがありますが、メインの業務ではありませんでした」。バリバリ使えます、というのは後でキツくなる。というかすぐにバレる。それでも素人に毛が生えた状態であることはアピールしておこう。



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