フィリップ・ロス「ポートノイの不満」
この本はAmazonで買うしかなかった。というのもこの本、最近の本屋ではもちろん、図書館にだって置いていないのだ。今回初めてAmazonの中古本を買った。練馬の古書店が3日くらいで送ってくれた。今や古書店だってAmazonを使って本を売っているのだ。そうでもしない限り本が売れないんだろう。それは寂しいが、ネットを使わなければ一生で会えない本だってある。
なぜこの「ポートノイの不満」を読もうと思ったか? この前、初めてフィリップ・ロスの本を読んだ。「さようなら、コロンバス」。この後味がとても良かったのだ。だから次のロスの本を読むのを楽しみにしていた。図書館に行って「フィリップ・ロス」と調べると、コロンバスの他に「素晴らしいアメリカ野球」が置いてあった。タイトルも良いし、よし、これを借りてめちゃくちゃ読んでやろ、と思った。しかし開けてみると「コロンバス」とは全然違う、ただの読みにくい本だった。結局50ページほど読んで返却。一旦この作家のことは忘れることにした。
でも、やっぱり気になってくる。あの後味をもう一度味わいたいと思う。ウィキペディアでフィリップ・ロスを調べると、色々でてきた。その中でもタイトルに惹かれたのがこの「ポートノイの不満」だった。僕はこの「不満」系の単語に弱い。あらすじを読み、少なくとも「素晴らしいアメリカ野球」のような散文じゃないと思い、Amazonで買った。
読み始めて3ページもしないうちに分かった。これ、どちらかと言えば「素晴らしいアメリカ野球」寄りだ…。とにかく脈絡のない文章が勢いだけでガンガン飛び込んでくる。疲れる。「さようなら、コロンバス」のあの透明な文体はどこに…
しかし、辛抱して3日ほど読み続けると、あることに気づく。
「徐々に癖になってきて、楽しみになっている自分がいる」ということだ。
僕はこれを「好感度読み」と呼んでいるのだが、一旦その作家を「お気に入り」にしてしまうと、もう何を書いていても好きなのだ。本を読んでいながら、その作家が僕と同い年くらいだった時のことを想像する。きっと友達少なかったんだろうな、とか、女にはモテたんだろうな、とか。そういうのは単語の選び方1つ1つに現れる。そして厳しいことに、その作家が「お気に入り」になるかは1冊目で判断する。「さようなら、コロンバス」はクリアした。
後半で、主人公がエリート街道を歩いてきたわりに30代になっても結婚できず、自分より「下」の同級生が結婚して子供を持って、なんでだ!となり始める。この辺でやっと一息つける。ありきたりな小説は面白くないけれど、その全く逆の小説もまた、読者を疲れさせる。一番いいのは、こういうふざけた話の中に要所要所で「あるある」を入れてくる「勘のイイ」本だ。
次に読むべきフィリップ・ロスの本は何がいいんだろう…
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