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2.5次元舞台のすごさ――LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」千穐楽を観て


アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」について

今年の5月だっただろうか。職場で「ぼっち・ざ・ろっく!」が面白いという話を聞き、さらにネット上でも話題になっていたことから、アニメをアマプラで見てみた。私の世代はまさに「けいおん!」世代ともいえる、ちょうど高校時代にけいおん!の影響で軽音楽部入部者が増えた世代。第二のけいおん!とも言われていたぼざろに、「いや、あのけいおん!と比較するのもあれだけども」と思いながら見た。

なんだこの主人公は……

ヒトならず者であるところもそうなのだが、いわゆるアニメで書かれるようなかわいい「陰キャ」ではなく、「ド陰キャ」。「ただしゃべらずにおとなしいだけじゃないぞ、本当の陰キャは」というのを体現したかのような後藤ひとりの姿に驚愕した。そして最後までみて「これは面白い」とすぐ2週目を見て、さらにバンドマンが見るぼざろ解説を見て、さらに3週目見て……あっという間に虜になっていた。

結束バンドの楽曲

結束バンドの楽曲は、リョウさんこと山田リョウが作曲し、ぼっちちゃんこと後藤ひとりが作詞している設定なのだが、これがとてもいい。一番お気に入りの曲は「星座になれたら」。最終話の曲でもあるのだが、アニメを見ていくと歌詞とのリンクに良さを感じる。次点で「忘れてやらない」。これはぜひアニメの流れで見てほしい。

聖地巡礼――いざ下北

そして、どれくらいぼざろにハマったのかというと、人生で初めて聖地巡礼をするくらいにはハマってしまっていた。
そもそもリアタイではなく、遅れてアニメをみたのですこしズレた6月に行ったからか、そこまで混んでなく、余裕で回ることができた。

星座になれたら で喜多ちゃんが指さしてる場所
STARRYまでの道中の劇場とヴィレバン
アーシャを撮ろうと4人でジャンプした壁

そして、初めての舞台

そして舞台が始まった。私は今まで一度も舞台を見たことがなかった。さらに言えば、2.5次元舞台にあまり良いイメージを持っていなかった。ぱっと頭に浮かぶのは、ニコニコ動画にアップロードされていた古のテニスの王子様ミュージカルだったり、実写ドラマ化して失敗を重ねてきた数々の作品を見てきたからかもしれない。推しの子でいえば、あの今日あま実写化状態というべきか。一方で2.5次元のライブには明るく、そもそも声優ライブに行ったりラブライブ!のライブに行ったり、そういうところに違和感を感じたことはない。もしかするとやっているのが声優自身だからかもしれない。

ただ最近、アニメから舞台になるパターンで「よかった」という感想が良く流れてくるようになった。とくに記憶にあったのはリコリコことリコリス・リコイル。そしてその舞台と同じ演出・脚本の方がぼっち・ざ・ろっくの舞台をやるというもんだから、期待できる。さらに初日以降のTwitterの様子を見ると、とても良いらしい。これは見たいと千穐楽夜公演の配信チケットを購入した。

え……、本物のぼっちちゃん?

ぼっちーずのダンスから始まるのだが、まぁそこまで驚きはしなかった。舞台演出としてダンサーから始まるのもあると思う。しかしうまいなぁ……と思ったのは、このぼっちーずをダンサーという位置づけだけでなく、イマジナリーフレンズとしてさらに黒子としても活用していくところ。これは天才的だと思った。そして歌が始まりしゃべり始めるぼっちちゃん。おや?あまり違和感を感じないぞ?しかも動きや立ち方がまさにぼっちちゃんそのもの……

え……、本物の虹夏ちゃん?

そしてでてくる虹夏ちゃんこと伊地知虹夏も、なんだこれはぁ。声も演技も完璧じゃないか。そしてリョウさんもスタイルもそうだし、表情一つとってもすばらしい。そしてギタ男もきちんと口がうごくという小道具まで細部のこだわりがすごい。さらに完熟マンゴーの箱までも。その後出てくる演者たちも、それぞれのキャラクターへの寄せ方がすばらしく、今日あまのような心配をしないでいいんだなと思ったところだった。

舞台でできること

ぼっちちゃんはよくヒトじゃなくなったり、とんでもない妄想を繰り出すのだが、それを舞台でうまくやるのがぼっちーずに与えられた役割。さらにサイコロトークの場面では、実際にサイコロを転がし、どういう風に学校の話に抽選するのかと思えば、そこもぼっちーずが活躍。そして音楽ステーションの客との掛け合い。こういうところも観客がいるいいところである。一方で、わざわざやらんでよくない?というところまでやるこだわりもすごく、実際に水風船割って見たり、アーシャ撮影のときのカメラの映像を後ろにリアルタイムで流したり、ツチノコも貧乏神?胞子?の姿もわざわざ作り、本当にすごい。作品への愛とこちらが求めているものを的確に提示してくれる。

ライブシーン

なんといってもこの舞台の魅力は、その演者たちが生演奏でライブシーンを演じるというもので、いったいどれだけの労力があるのだろうかと心配した。そもそも舞台の稽古があるのに、さらに数曲分演奏の練習もしなければならない。そもそもキャスティングの時点でそれぞれ各々の楽器ができる人を選んでいるのだろうが、それだってすごすぎる。
表情や演奏一つとっても、そのときの状況を演じてくれていた。すこしまとまらない演奏や硬い表情から、まとまって楽しそうな表情。本当にすごいと思う。

メタ発言とアドリブ

舞台といえばなのかわからないが、様々なメタ発言も面白かった。度重なる終演案内や物販販促、とくに後藤ふたりの黒子や観客相手への言及がぼざろ感とマッチしているからこそ観客の笑いを誘ったのだと思う。私は千穐楽夜公演のみの視聴なので、明確にどれがアドリブなのかはわからなかったが、アニメにはなかったセリフや反応などは新しく、ワクワク感が止まらないものだった。

タイトル回収

事前情報を入れていなかったため、どこまでやるのか知らなかったが、ちょうどアニメでもタイトル回収だった8話までの内容ということで、終わり方もよかった。千穐楽夜で最後の公演ということもあり、虹夏ちゃんは最終シーンから目がきらきらとしていたのが配信では見え、最後のセリフも息を飲んでから「ぼっち・ざ・ろっくを!」でエンディングになる。

境界線はどこ?

そして演者が出てきて終わりに向かうのだが、この時のぼっち役の守乃まもさんの感じがぼっちのままで、「ん?これは演技なの?それとも素なの?それとも役に入り込む憑依型?」とわからなくなるくらい挙動不審でその後も一生挙動不審で、最後には土下座して終わりとなった。いったいどういうことなんだ……。
気になってTwitterを見てみると……ん?

あーこれあれだ。インターネット文化に明るい人だ。ってことはもしかして、ガチ?

2.5次元舞台のすごさ

というわけで、初めての舞台観賞だったわけですが、大満足でした。正直、本当に2.5次元舞台というのを疑いの眼で見ていた身としては、度肝を抜かれたというか、ここまですごいのかと感嘆しかない。私と同じように、2.5次元舞台に対して良い印象を持っていない人はぜひ一度、舞台ぼっち・ざ・ろっくを見てほしい。ありがたいことに、まだ見る方法がたくさんあるのでぜひ。

P.S.解説オタク気質

自分は昔から、アニメやライブを繰り返し見て、演者やスタッフが用意した細かいこだわりを噛み締めたいので、いろんな情報も入れながら細かいところまで見ていきたい派なのだが、このぼざろはアニメからバンドに対する解像度の高さも素晴らしい上に、それが舞台でもきちんとされていてよかった。さらに言えば、それを可能にする演者(声優そして舞台役者)のキャスティングも素晴らしい。守乃まもさんはこのぼざろぼっち役で初舞台。Twitterやネット上の情報もそれしかなく、どうやってこの逸材を見つけてきたのか、本当に不思議で仕方がない。そして初舞台でアニメCV青山吉能のぼっちちゃんの演技すごいと話題になったキャラを演じるのも相当なプレッシャーだったろうに、それをやりぬいたのもすごい。本当にすごいしかない舞台だった。
最後に、最初の方で紹介したバンドマンが解説するこの舞台の解説動画を紹介して終わりたいと思う。


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