『公務員のマーケティング力』

 公務員としてなにか必要なスキルはないだろうかと考えながら、たまたま手にとった一冊。著者は福岡県の糸島市職員である。差別化できる力を得るために、マーケティング、財務、組織など世界のビジネス現場で、偉人たちが生み出した経営手腕や、企業の成功・失敗事例をもとにした実践演習を通じて、MBA(経営修士)を取得。2016年には地方創生☆政策アイデアコンテストで地方創生担当大臣賞を受賞している人物である。

 内容は著者の職場である糸島市役所を例に挙げ、マーケティングや経営学を軸に実践的、理論的に政策を作成していく方法を記したものであった。地方公務員としての仕事のイメージが抽象的で漠然としていたため、働くモチベーションにつながった。
 以下は本の内容のアウトプットとする。 

公務員のマーケティングについて
・「顧客」や「便益」を考えるのがマーケティングの基本であり
公共サービスもターゲット(市民や県民)がいることを忘れない
・政策案、企画書を作る際には、以下の3つの手順を理解する
環境分析(3C分析)→STPマーケティング(ターゲット選定)→マーケティングミックス(4Pで戦略を立てる)

環境分析について
・分析の基本はMECE(もれなく重複なく分けていく方法)
その手段として3Cやセグメンテーションの5切口、4Pなどがある
例:観光客を滞在日数や交通手段はどれか、県内か県外かなど
・最初に課題を設定し、その分野の3C(Customer 市場・顧客 Company 自社 Competitor 競合)を分析することでもれなく自分の意見を述べることができる
例:課題を「観光客の減少」と設定
市場・顧客は「観光入込客の推移、観光産業の市場規模など」
自社は「地域内の主要観光地、観光産業の企業など」
競合は「近隣自治体、類似自治体の観光政策、類似サービスなど」
・分析するとき最初に市場規模を調べる。その際には、大から小を意識して全体の規模や大きいものから調べる。理由はその市場にどの程度のお金が動いているか、困っている人がいるのかを知るためである
・規模を調べたあとは成功率を高めるためトレンドを調べる。追い風に乗れば成功率は上がる
・課題を狭くして解決策を明確にするためデータは分解する

セグメンテーション・ターゲティングについて
分解するためのツールとしてセグメンテーションの5切口(時間、地域、人口統計、行動、心理)がある
・分解して課題の絞り込みができれば、「こうすれば解決するのでは?」と仮説を立てる。その仮設を確かめるために使うのが1次関数
縦軸に課題の過去のデータ(例:年間観光入込客数)を取り、仮設(例:観光カテゴリー数)を横軸に取る。そして実際に比例しているかを確かめる
比例していなければ他の要因を探す
・1次関数を使うことでおおよその予算と結果がわかるので説得力が増す
・別の変数を取ることで違う特徴も見えてくる(グルーピング
・データがないときは代替できるものを探す。効率を考えて
重要度が高いものは調査し、そうでないものは諦めるのも大事
・複数の折れ線グラフを並べることで政策の効果を発見できる

ポジショニングについて
・地方が生き残るためには徹底的な差別化が不可欠となる
・差別化するときに使うのはVRIO(Value 価値 Rarity 希少度 Imitability 模倣可能度 Organization 組織編成)
・VRIOを考えたあとは、他の地域の商品・サービスまたは組織そのものを比較して、自分たちのものがどんなポジションに配置されるかを表すポジショニングマップを作る

マーケティングミックスについて
・政策を考える際の4PはProduct(商品)、Place(販路)、Price(価格)、Promotion(宣伝)のこと。ポイントはこれらを「同時」に考えること。
同時に考える理由は、特産品や認証制度だけが出来て終わる、店舗に置いても誰も知らない、動画ができても買える場所がないなどの失敗を防いで成功率を高めるためである
・4Pでは「誰と組むか」が重要。組む相手で全く違う商品・アイデアになる
発想は、類似×逆転×妄想。あとから実現可能なアイデアにしたら良い
・4Pを同時に考える上で予算まで広げて考える。最初から宣伝や販路開拓の業務まで予算を見込んで政策案、企画書に入れる
・地域のものを資源に変えるのは。商品(モノ)から。商品(モノ)からストーリーをつけることでコトになり、価値を感じてもらえる
・商品やサービスを磨くには、直接消費者との接点を持つ仕組みを作ることが重要。直接接点を持つことで消費者ニーズやクレームを生産者は聞くことができ、迅速に工夫や対応ができる
・成果を見て改善するためにはAIDA(A(Attenntion)認知・注意、I(Interest)興味・関心、D(Desire)欲求、A(Action)行動)モデルを使う
商品を知っているか(A)、興味があるか(I)、購入したいか(D)、購入経験があるか(A)に沿ってアンケートを作る
商品を知っている人が少なければ宣伝に力を入れる、購入したい人が多いにもかかわらず購入経験が低ければ販路の拡大を改善するなど

戦略テクニックについて
・マーケティングをするときには「近→遠」の順番を忘れない
・域外へ進出するときは「現地の情報を持ち現地で動いてくれる人」と組むことが成功率を挙げる
・組む相手を選ぶときの3つの基準
①相手の立ち位置を利用できるかどうか
②新しい商品やサービスを生む「機会の創造」につながるか
③自分にない能力を相手から学習できるか

またそのさい狙って異分野、外部と組むことで
注目を浴びたりイノベーションが起きやすくなる
・目標は16%を目指す(ロジャースの普及曲線:早期に購入してくれるイノベーターやアーリーアダプターを合わせて16%を超えると爆発的に商品が普及する)
・1番には「先発優位性」があるため、多くの顧客、利益を得ることができる。1番手を狙うコツは1番になれる範囲を絞ること。

マーケティング心得について
・政策を実行する上で調整力が重要になる
①予防:  利害関係者を洗い出し、情報レベルを合わせる。
     「聞いていない」「想定と違う」を減らし、事前に味方を増や
      す努力をする
②初期対応:大原則は、「とにかくその人のところに行く」。面と向かって                    
      対応することが大事となる
③事後対応:初期対応が出来ず、大爆発を起こしたら、後手の対処療法。
      これ以上ひどくならないように事後的な処理をすすめる
・政策を考えるときには「何のためか」「長い目で」「細かいとこを」の順で考える

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