『2020年6月30日にまたここで会おう』

エンジェル投資家、瀧本哲史さんが東大で行った二時間の講義をまとめたもの。瀧本さんは自身の経験やジョージ・ソロスの事例から、一人のすごいカリスマを生み出し世界を変える「カリスマモデル」よりも、優秀な若者たちに武器を配る「武器モデル」が世の中を変えられると感じた。

瀧本さんが言う武器とは、「生きていく上での教養」である。教養の役割は他の見方、考え方があることを示すことであり、この残酷な資本主義社会を生きていく上で武器となる教養を得ることが大切であると語っている。

ブッダが死ぬ間際、これからの指針を失った弟子たちに「これからは自分たちで明かりを燈せ」と言ったように、自分で考える上で必要なのが教養である。うんちくや知識をひけらかす為に教養があるのではなく、自分自身と拠りどころするために真に「学ぶ」必要があるとのことである。

小休憩を挟むと話が変わり、「交渉」がテーマになる。交渉をする上で悪い例として挙げられたのが、情に訴える交渉である。「僕たちが可哀想だからああしてくれこうしてくれ」では交渉はできない。交渉で重要なのは、相手の話を聞き相手の利害に沿うように提案をすること。直接的な相手の利益でがない場合は、相手の所属する組織や親しいものが利益を得るような交渉を行う。その際は、アンカリング(条件なり枠組みを相手から提示されるとそこを基準としてしまうこと)に騙されないように相手の理由をすべて潰すように交渉をする。交渉の本質は、「情報戦」であり、相手からどれだけ情報を集められるかが成功への鍵となる。

しかし、実際の世の中は合理的な人間ばかりではない。もうメリットが見当たらないはずなのに、意地になって意見を曲げない人も大多数いる。そのような人への向き合い方は、相手が意見を曲げない理由を探すことが対処法となる。なぜ意見を曲げないのかはその人なりの理由がある。よくわからない価値観を前提にして、そこから作戦を考える。それが非合理な人間と交渉する際の向き合い方であるとのことである。

この本は未来を担う若者たちへの檄である。印象的だったのは、瀧本さんは「私はこのように思う。」などあくまでも一個人の意見であることを前提にしていたのが印象に残っている。正しい答えなどない、自分が正しいと感じた道に進むことが大事であることを改めて感じた。

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