秋の空のように気高い真理を知る
人生は、なぜこんなにも辛いのだろうか。
何もかもが思いどおりにならない。
仕事、恋愛、趣味、どれ一つとしてうまくいかない。
妥協すれば後悔し、挑戦すれば失敗する。
この苦しみや孤独からどうすれば逃れられるのだろうか。
私は、ずっとこの悩みに囚われて生きてきました。
色んなコミュニティに属したり、仕事に打ち込んだり、あらゆる哲学書を読みあさったり、恋愛に逃げて、妥協して結婚を考えたり、お金をバンバン使って新しいことに挑戦したり。
でも、何も解決しませんでした。
それどころか、状況は悪くなるばかりです。
年齢が上がるにつれ、苦しみと孤独はいっそう大きくなるのです。
そんな中、私は仏教に出会いました。
そして、ついに、今までいくら試行錯誤しても、辛い思いがなくならない理由が分かりました。
私は、生まれてから29年間、問題の大元に気付いていなかったのです。
では、問題の大元、つまり、苦しみと孤独の根っこは何なのでしょうか。
それは、自分の心です。
苦しみと孤独は、自分の周りの世界にあるのではなく、自分の心が引き起こしているものなのです。
身の回りの世界を観察してみてください。
どこにも苦しみや孤独は落ちていませんね。
苦しみと孤独は、私の心が勝手に世界を解釈して、生み出していたものに過ぎなかったのです。
この知恵を得て、私は、もっとも単純で、もっとも偉大な仏教の真理に気づくことができました。
今からその真理をお話しします。
真理は、2つです。
1つは、世界は自分の思いどおりにはならないということです。
この真理は、一見当然ですが、心の底から納得して心に刻み込むのは簡単なことでは簡単ではありません。
例えば、仕事がつまらない、と感じてイライラしたとします。
このイライラの原因は、つまらない仕事をさせないで欲しい、という願望です。
しかし、世界は思い通りにはなりません。
なので、世界を思い通りにしようとする願望を抱くこと自体が間違っているのです。
このようにイライラしてしまうこと自体が、真理を心に刻めていない証拠です。
世の中は思い通りにならない、ということを徹底的に心に刻み込んだならば、自分勝手な願望を押し付けることで、私たちは本当の世界を歪め、切り刻んでしまっていることに気付きます。
私たちが、勝手に期待を押し付けて作り出した世界は、まやかしです。
サンスクリット語でマヤと言います。
マヤは、蜃気楼のようなものです。
この真理を知る前の私は、行先にオアシスがあると勝手に錯覚し、必死に走って近づいたものの、実際はオアシスがなかったことに気付き、怒り狂い、打ちひしがれ、そのうちに元気を取り戻し、また新しい蜃気楼を見つけて走っていくような、哀れな旅人でした。
この真理が分かった瞬間、マヤは打ち払われ、世界は一気にありのままの、美しくも残酷な姿を露わにしてくれました。
その圧倒的な迫力に、心が震えるのを止めることができませんでした。
では、次の問題として、ありのままの世界を見る目を持続するにはどうすれば良いでしょうか?
実は、これは結構難しい問題です。
なぜなら、心は絶えずざわめいていて、四六時中、勝手な願望を抱き、まやかしの世界像を作り続けるからです。
故に、そうなる度に、すぐさま気づいて、マヤを打ち払わなければなりません。
オススメの方法は、マヤがむくむくと立ち上がる度に、腹に力を入れて、「無!!」と叫ぶことです。
これは、無門関というもっとも有名な禅の公案集で、最初に出てくるエピソードを応用したものです。
マヤを打ち払い、ありのままの世界を見つめ、自分なりにベストを尽くし、結果は全て運命に任せる。
これこそ、正しい生き方です。
以上が、1つ目の真理でした。
2つ目の真理は、慈悲心がない限り孤独は消えないということです。
慈悲心というのは、他人の幸福を願う心です。
実は、世界が全て思い通りになっても、孤独は消えません。
考えてもみてください。
あなたが世界の王様になり、全ての人を思い通りに動かせるとしましょう。
世界が思い通りにならないという苦しみは減るかも知れません。
しかし、自分だけが絶対的な力を持った時、対等に理解し合える人はいなくなります。
その時、圧倒的な孤独が立ち現れます。
では、どうすれば孤独は消えるのか?
答えはシンプルです。
自分本意に考える思考をやめれば消えます。
他人の幸福を願った時、突然、孤独は消えるのです。
これは、チベット仏教の指導者、ダライ・ラマが常々説いておられることです。
試しに、一番大切な人の幸せを願ってみてください。
見返りを期待せず、実現することも一切期待せず、ただ願ってみてください。
どうでしょう。
孤独は消え、胸のあたりが温かくなりませんか。
しかし、この感覚を持続するのは結構難しいです。
日々のトレーニングが欠かせません。
実は、もっとも有効で効率的なトレーニングは仕事です。
日々、お客様のためを思って仕事をする。
毎日実践できて、お客様にも感謝され、お金もたまり、良いことずくめです。
「僕は」「私は」「自分が」という一人称が、頭の中で回り始めたら、間も無く孤独がやってきます。
すぐに、人様のことを考えて、この孤独を打ち払いましょう。
人間は、協力しあうことで、食物連鎖の頂点に上り詰めました。
遺伝子レベルで、利己的な行動は、孤独という罰をうけるようにプログラムされているのだと思います。
以上が、2つ目の真理です。
私は、10年間悩み続けましたが、たった二つの真理を刻み込むだけで、人生はたちまち感動的で豊かなものになるということを知ることができました。
言葉になりませんが、豊かな真理を授けてくださった先人、家族、今まで出会ったすべての方、ここまでお読みくださった皆様に感謝の意を表したいと思います。
ありがとうございました。
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