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第58回 源為義、息子に処刑される(3)

真の心根は優しい清盛は悩みました。しかし元々、この叔父忠正とはそりが合いませんでした。一時は惣領忠盛の地位を奪おうとする行動さえありました。忠正一家が命乞いに清盛の前に現れました。
「平家の棟梁として、この叔父を助けてくれようのう。そなたの敬愛する忠盛のただ一人の弟」
忠正は憐憫(れんびん)を請う表情を見せました。しかし家来の家貞と盛国は意を決して言いました。
「殿、心を鬼になされませ。平家のためでございます」
清盛は心を決め、階(きざはし)の上から、庭にたたずむ忠正一家に言いました。
「許されよ、叔父上」すると忠正は表情を一変させ、清盛を罵りました。
「何が平家じゃ、平家の血の一滴も流れていないくせん!」
清盛は家来に命じて叔父忠正らを斬首しました。

清盛が忠正一家を斬ったと聞いて、信西は不安がる義朝を呼びつけ、平伏する義朝に冷たく言いました。
「朝敵、為義を討つように」
義朝は仰天しましたが、平伏したままで言いました。
「我が勲功に代えて父の命をお助け下さるよう」
「ならぬとの君命でござる」
信西は冷徹に言ったのでした。

暗い気持ちで義朝は邸に戻りました。父為義に自分が頸を刎ねるという積りでした。しかし何かを期待するように、光る細く黒い眼を見ると真実が言えなくなりました。
「父上、お喜び下さい。実は、今回の私の軍功と引き換えに父上の助命を願って受け入れられました」
全く反対の事を言ってしまって、義朝は思わず目を伏せました。(続く)

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