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第60回 『源氏の物語』の一次完成

寛弘5(1008)年11月17日、ついに中宮彰子と若宮の一条院還啓が行われました。いわば凱旋です。その手土産として豪華な『源氏の物語』十七帖が待ち兼ねていた一条天皇に献上されました。
その時は、空蟬、夕顔、末摘花、玉鬘などは、まだ入っていない状態でした。それを列挙します。(現在の帖の番号で示します)
(1)桐壺・・光源氏の誕生、母・桐壺の更衣の死、藤壺の女御との出会い
(5)若紫・・北山で10歳の若紫を見初め、二条院に連れて帰ります。
(7)紅葉賀・・藤壺は源氏の子を宿します。源典侍との交渉。
(8)花宴・・弘徽殿の女御の妹・朧月夜と契ってしまいます。
(9)葵・・懐妊した源氏の正室・葵と六条御息所が車争いをし、御息所の 
     生霊により、葵の上は夕霧を出産後、亡くなります。若紫と新枕
(10)賢木・・伊勢に下る六条御息所との別れ。桐壺院崩御、藤壺出家、
     朧月夜との密会発覚を描きます。
(11)花散里・・須磨に下る事を決意した源氏は、優しい花散里に告げます
(12)須磨・・須磨での侘しい生活、頭中将が訪ねて来ます。
(13)明石・・須磨で嵐にあった源氏は、明石の入道の招きで明石の君と
      結婚します。
(14)澪標・・召還命令が出て、お礼に住吉大社に参ります。明石一行とは
      擦れ違い。
(17)絵合・・六条御息所が亡くなり、その娘斎宮を、藤壺と協議して冷泉
      帝の女御とします。頭中将の姫も入内しており、二人の女御で
     「絵合」が行われ、勝った斎宮の女御が中宮となるのでした。
(18)松風・・明石の上が産んだ姫君を、紫の上の養女とします。
(19)薄雲・・最愛の藤壺が崩御します。
(20)朝顔・・藤壺の面影を従姉の朝顔に求めますが、結婚しません。
(21)少女・・夕霧が元服し、頭中将の娘・雲居の雁と恋仲になりますが、
      頭中将は仲を引き裂きます。壮大な六条院が造営されます。
(32)梅枝・・明石の姫君の東宮入内準備を描きます。
(33)藤裏葉・・明石の姫君の東宮入内、夕霧と雲居の雁の結婚。源氏は
   准太政天皇として六条院となり、冷泉帝・朱雀院も六条院に行幸
   して大団円の中、物語は終わるのでした。

道長の激励のもと、能筆の者が写し、多数の女房が糊付けに奮闘して、美麗な『源氏の物語』が献上されたのでした。(続く)

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