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第69回 正月2日からの出来事(源氏物語・初音)

2日は、上達部(かんだちめ)や親王方などが、いつもの様に年賀に参上します。次回出てくる、螢兵部卿の宮なども。

忙しい数日を終えて、やっと源氏は二条東院に渡ります。
末摘花には年末に、柳色の織物に、優雅な唐草の乱れ模様のなまめかしいのを不似合と思いながら送ります。
案の定、不似合な感じに、昔は髪の毛が黒々と美しかったのが、もはや白髪まじりになって哀れだと、いつもの様に紫式部は末摘花を笑い者にしています。
「兄の阿闍梨に皮衣を取られてしまって寒いです」と末摘花は言います。
黒貂(くろてん)の皮衣ー往時の豊かな常陸宮家の財産です。
源氏は寒いのならまだたくさん衣裳を援助しますと言います。末摘花は信じ切っているようです。

平安時代は邸によく盗賊が入り、豪華な衣装を纏っている姫君ごと奪って、途中で姫君を捨て、何もできない裸の姫君は野犬に喰われてしまったという話も伝わっています。源氏の庇護があって、末摘花は好きな様に暮らせたでしょう。

二条東院には尼になった空蟬も住んでいます。暮れにくちなし色の袿を品よく着ています。
空蟬はこうして世話になっているお礼を言います。源氏はまた調子に乗って、
「男と言う者は、私の様にこんなに素直な者ばかりではないのだと、納得された事もなくはなかったでしょう」
と遠回しに言い、さては継子の河内守に言い寄られた事を知っているのだと空蟬は分かり、顔も上げられず泣くのでした。

子細は分からず、源氏は多くの女性を養っているのだという思いを強くするのでした。


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