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第65回 後嗣・頼通の縁談

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寛弘6(1009)年が明けて、前年待望の孫皇子も生まれてご機嫌は道長は香子に新しい難問をぶつけてきました。
「頼通(道長長男)も十八になった。正室として具平(ともひら)親王の隆子(たかこ)姫が十五とか。摂関家の後継ぎの北の方として家柄として勝るものはない。聞けばそなたの一家は具平親王の親戚でもあり、親しいそうな。ここは一つ骨を折ってくれまいかのう」
にんまりと笑う道長のこの頼みに香子は正直悩みました。

確かに父為時と具平親王の母は従兄妹。為時も失職中は具平親王の家司となって収入面で助けて貰いました。けれど、香子は15年前の義理の叔母・大顔の急死に見捨てた様な行動を取った具平親王に疑念を抱いていました。二人の間の男児を従兄の伊祐に押し付けた事も。
そして普段から皇室の一員である親王は、摂関家の専横を憎む口ぶりをしていました。道長からの何回かの頼みに香子はいつも生返事をしていました。
するとどうでしょう。道長は業を煮やして別の伝手を頼り、この縁談をまとめてしまったのです。聞けば親王の方が大層乗り気だったとか。
「結局、殿方というのは権勢に弱かったのですね・・・」
香子は嘆息するのでした。(続く)

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