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第162回 維盛と頼盛

富士川から戦わずに逃げ帰った事に、清盛は激怒しました。清盛は、これまで戦いに負けた事がありませんでした。
「維盛を鬼界ヶ島に流し、忠清を死罪にせよ」
と叫びました。しかし忠臣、盛国が諫めました。
「忠清は臆病者ではございませぬ。あの者が十八の時、鳥羽殿の宝殿に賊が二人逃げ込みました。誰も逮捕に向かおうとしない中、忠清は単身乗り込んで一人を斬り、一人を生け捕りにしました。あれほど勇名を誇った者のこのたびの失敗、よほどただ事ではなかったのでしょう」
盛国は切々と語りました。
「分かった・・・この度は無罪としよう」

維盛も無罪となりましたが、嫡流を離れた感のあった亡き重盛の小松家の失態で維盛は身の置き場もなくなりました。
しかしそれ以上に立場を悪くしていた者がいました。頼朝の命を助けた池の禅尼の息子、頼盛です。
「あの時、禅尼殿が助けさえしなければ・・・」
頼盛は、平家方の白眼視の中、耐える事しかできませんでした。(続く)

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