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第36回 夫・宣孝の死

長保3(1001)年が明けました。前年末の皇后定子の崩御で諒闇となり、節会もなく世の中はひっそりとしていました。定子が命と引き換えに産んだ媄子内親王は、生前定子に辛く当たった東三条院詮子様(一条天皇生母・道長姉)が引き取ったという話が流れました。
香子(32歳)は数え年3歳になった娘・賢子の成長が楽しみでした。そしてたまに来る夫宣孝ともそれなりに幸せでした。
2月4日に右大臣顕光の長男重家(25歳)が世を儚んで友と三井寺で出家したという事件は人々を驚かせました。
翌日、夫宣孝は仕事の事で道長に呼ばれました。健康でいてくれればいい、香子はそんな気持ちでした。

3月に香子にとって嬉しい事がありました。父為時(55歳)がやっと越前守が任終(は)てとなり京に帰ってきたのです。為時は初めてみる賢子を抱き上げ、その姿を見る香子は幸せでした。

しかし運命は突然にやってきました。宣孝が本宅で病に倒れ、4月24日呆気なく亡くなったというのです。49歳でした。
結婚二年半。幼い賢子を抱えて、悲しいというより香子は呆然としていました。父が帰ってきてくれた事を本当にありがたく思いました。
ここから香子の運命も大きく変わっていきます。(続く)

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