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第40回 明石の君(1)

申し訳ありませんが前回の続きを少し。
紫の上は、自分が藤壺の身代わりだと言う事を知っていたのでしょうか?また女三の宮も藤壺の姪だから新しく妻に迎えた事も?
『源氏物語』にははっきりとした事は書いていません。
市川雷蔵さん主演の『新・源氏物語』(1961年)で、藤壺への思いに悩む源氏に、少女の若紫(調べると、高野通子さんという女優)が「私が藤壺様の代わりになります」と源氏にも周囲にも宣言する場面は、私と共にビデオを観ていた人も「なんで知っとったんや!」と驚き失笑しました。

さて、明石の君ですが、どうも源氏とは再従兄妹の設定の様です。一族が京での出世を諦め明石の国司になるのですが、妻が皇族の出という事で関係ありそうです。
かつて在原行平(業平の異母兄)が文徳天皇の妃にちょっかいを出して須磨に謹慎させられたという伝説がありました。もう香子の時から100年以上前の話なので伝説になっていたでしょう。
光源氏が朱雀帝に入内予定の朧月夜と密通を重ねそれが発覚し、須磨に謹慎する事になるのでした。
3月ということですが、ここでまた光源氏の最有力モデル源高明が安和の変で京を出立するのも3月で、やはり香子は現実の話を入れる事で臨場感を高めたのでしょうね。

須磨で嵐に会い、明石の入道に迎えられ、源氏は明石に移ります。
なぜ明石なのか?前述したように香子は明石で生まれたという説があります。父為時が播磨国の役人になっていた時期があるからです。もちろんやはり京で生まれたという説の方が優勢ですが。

毎度登場する『伊勢物語』に主人公業平がやはり芦屋に逼塞していて(父阿保親王の死が関係していたのかその領地にしばらくいた)、その時業平は18歳。現地の女性と恋をして、母の伊都内親王が身分違いを怒って別れさせると業平は意識不明で半日寝ていたという話があります。
そこで伊都内親王は二人の仲を認めて女の子が生まれました。
その芦屋の女性はどうなったのか(別れたのか亡くなったのか)出てこず、業平は25歳で紀氏の娘と結婚します。

その女の子は成長して、藤原保則という父と同い年ですが評判の良い貴族と結婚します。そして清貫という息子を儲けます。
清貫も順調に出世すし、大納言までなるのですが、930年、清凉殿に落雷があり(道真の怨霊のせいと言われた)不幸にも雷が当たって焼死してしまいます。(64歳)
ところがお気の毒なのはその後です。江戸時代に『菅原伝授手習鑑(かがみ)』だ上演され大人気となるのですが、道真を陥れようとして結局焼死してしまう悪役に「三善清貫」とあるのです。

これは道真の反対派だった三善清行と名前をミックスしたものだと思われます。
焼死しただけでもお気の毒なのに、何百年も後世まで「悪役」として貶めるなんてそれこそ二次被害だと思いませんか?

前説だけで終わってしまってすみません!明日は必ず「明石の君」本題に入ります!


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