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第51回 香子の復讐

香子は、「源典侍」という六十近い老女を十九歳の光源氏と契らせました。(香子の嫂の源典侍は五十歳でした)更に源氏に競争心が強い頭中将も源典侍と交渉を持ち、香子の筆は軽快に進み、ついに光源氏と頭中将が源典侍を巡って闇の中で闘わせる所までいきました。寝屋で驚いた源典侍が、
「あが君、あが君」と祈らせるまでに悪のりしました。

この短編は予想通り女房達に大受けでした。大爆笑の渦が各局で沸き起こっていました。帝や中宮の御前で、声の良い女房が朗読し、帝や中宮は笑み、傍の女房たちも口で袖を押さえて笑いをこらえていました。皆が実在の源典侍を思い浮かべたのは当然でした。

ついに源典侍は恥ずかしさに耐えられず辞表を出しました。それは帝や道長の慰留で差し止められましたが。
爆笑の後で、女房達は改めて、香子に畏怖しました。
「この方を敵に回したら何をされるか分からない」
入内当初とは打って変わって皆が丁重になりました。あの「日本紀の御局」と早速に香子に渾名した義理の叔母、左衛門の内侍もおとなしくなったのでした。(続く)

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