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第63回 斎院からの中傷

若い女房の裸身がちらつきながらも、あの盗賊の一件以外にも、香子が弟の惟規を不満に思う理由がありました。惟規はその頃、斎院の中将を恋人に持っていましたが、中宮方より斎院の方が華やかであると書いた手紙を読んだ事でした。
「ひょっとしたら、惟規は私が読む様にわざと置いてあったのかも知れないわ」
それに斎院の中将とは、香子が不快に思う大江の女房(後の和泉式部)の姪でした。手紙には、
「何と言っても風雅といえば斎院が一番。他は追随できない。中宮方は何か野暮ったい雰囲気だわ」
などと書いてありました。
「中宮方が野暮ったいと書いてあるけれど、こちらは中宮様のお世話、若宮のお世話、それからひっきりなしに来る殿上人(てんじょうびと)との応対・・・忙しいのですよ。独身の選子(よりこ)内親王のお世話だけでいい暇な斎院の様に優雅には暮らせないわ!」
香子は憤慨したが、どこかで惟規が見ている様な気になりました。(続く)

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