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第63回 元服式での驚き

元慶6(882)年正月2日、15歳になった陽成天皇の元服式が執り行われました。娘の入内を高子(41歳)に断られた太政大臣基経(47歳)はしばらく参内していませんでしたが、加冠という大役があるので渋々宮中へ行きました。
そして上座に座す陽成天皇を見て驚きました。とても大きくがっちりとなっているのです。今でも満13歳を過ぎた男の子は急に身体が大きくなっていきます。陽成天皇は日々乗馬や相撲に勤しみ、恐らく浅黒い健康的な、もう青年と言ってもいい感じだったのでしょう。
冠を乗せる基経の手は震えていたかも知れません。それを勝ち誇ったかの様な笑みを浮かべ見る高子。陽成天皇は、不思議そうに黒い瞳で伯父を見つめていました・・・と拙著には描きました。

先代の虚弱な御しやすい清和天皇と比べて、高子と陽成天皇のタッグは扱いにくいと基経は思った事でしょう。堀河邸に戻った基経はあれこれと思案しました。

正月7日、病身の皇太后明子(あきらけいこ)が太皇太后、そして中宮と言われていた高子は皇太后となりました。後年「二条の后」と言われる所以です。大夫には引き続いて異母兄国経がなりました。

正月25日、宮中女官の最高位であった源全姫(明子の叔母・嵯峨天皇の皇女)が71歳で亡くなりました。これで宮中は高子の異母姉である淑子(国経の同母妹)が仕切る事になりました。ただ、淑子は表面は忠誠を装っていましたが、内心では高子に対抗心を抱き、何とかしたいと思っていたのです。(続く)

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