派遣

派遣のバイトのくせに現場を仕切るな
そもそもバイトが仕切るな張り切るな
これは小さい時に親から教えられた

バイトは最小限の仕事を社員の前でだけこなせばいい

小学校の頃、よく先生が僕に教えてくれた事だ

そんな僕は今、派遣バイトに挑戦している
ほぼその日限りの職場
こんなところで張り切ったって仕方がない
お給料だけ貰って消えればいい
そう思っていた

今日の仕事は17時から22時までの
郵便物の仕分け作業

17時になり、みんなそれぞれのポジションにつき仕分けを始める
僕も仕分ける
単純な作業だ
楽勝だ
そう思っていた矢先
ある人物が目に入った
もみあげすごいバイト青年だ

なんだこのバイト、やけに張り切ってるな
仕切ろうとしてるな
こいつとは関わらないでおこう

それが第一印象
第二印象がもみあげ
第三印象が右左両方のケツポケットに刺さるペットボトルの紅茶
第四はくりくりおめめ

こんな奴とは関わってはいけない
いい訳がない
確実に飲みに誘われてバイトについての持論を熱く語られた挙句、おめめの自慢をされるに違いない

もみあげ紅茶おめめに目をつけられないよう
静かに働く僕
次第に単純な作業に飽き始め、集中力が切れ始めていた

僕はテンションを上げるため
頭の中で大日本帝國憲法を序盤から中盤まで繰り返し唱え始めた
「大日本帝、大日本帝、大日本帝、、、」
たくさん唱えた
テンションが上がった

テンションが上がった僕はテンションが上がったため
「さあみなさん!あと1時間です!頑張りましょうっふふふふふぁー!」
と叫んでしまった

18時3分の出来事だった

自分が怖くなった
しかしもっと怖いのが周りの働く人々

何があと1時間だ
まだ1時間しか経っていないぞ
なんだその笑い方は
誰だお前は

飛び交う罵声と二本の紅茶

二本の紅茶?!

そう
紅茶の犯人はあいつだ
間違いない
きっと自分より張り切っている人がいる事が許せなかったのだろう
許せなくて紅茶を投げたのだろう
しかもその紅茶はキャップが空いていた
全部かかった
嘘とかじゃなくて
全部かかった

あーあ
紅茶嫌いじゃなくてよかった
ちょっとべたべたするけどね

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