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【コラム】ほんとうの原因はどこにある?-交絡の影響を考える

 僕たちの住む世界には、数多くの規則性を見出すことができます。蛇口をひねれば水道から水が出ますし、水を熱すれば水蒸気となります。支えのない物体はそのまま地上に落下することでしょう。
 
 事象Aが事象Bをひき起こすとき、AをBの原因、BをAの結果と呼びます。そして原因と結果のつながりを因果関係(causality)、因果関係が成立するような性質を因果性(causality)と呼びます。
 
 統計学を含め、自然科学における法則は因果性が前提となっています。例えば、屋外で小さなボールを放り投げたとしましょう。ボールの運動の変化(加速度)は、加えられる力と同じ方向に発生し、そして力の大きさに比例し、またボールの質量に反比例するという物体の運動法則を大きく逸脱することはありません。
 自然界で発生する出来事は、全くデタラメに生起するわけではなく、何らかの秩序があり、同じような条件のもとでは同じ現象がくりかえされるように感じられます。このような性質を自然の斉一性(principle of the uniformity of nature)と呼びます。
 
 ところで、2つの事象のうち、1つの事象が変化するのに合わせて、もう片方の事象が変化しているように見える関係を相関関係と呼びます。しかし、相関関係にあるものが必ずしも因果関係にあるとは限りません。因果関係の他にも、偶然の影響逆の因果関係共通の原因(交絡)を挙げることができます。

 今回の記事では、共通の原因、すなわち交絡と呼ばれる現象について解説し、コホート研究の結果を解釈する上での留意点を整理します。

交絡ってなんですか?

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