【文献】日本におけるHPVワクチンの接種率と子宮頸がん死亡予測

Simms KT, et al : Impact of HPV vaccine hesitancy on cervical cancer in Japan: a modelling study. Lancet Public Health. 2020 Feb 10. [Epub ahead of print]
doi: 10.1016/S2468-2667(20)30010-4. PMID: 32057317

【背景】日本におけるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の助成は2010年に12〜16歳の女性を対象に開始され、3用量のカバー率は当初70%以上に達した。日本の定期接種プログラムに正式に組み入れられてから2か月後の2013年6月14日、HPVワクチンの予防的推奨は、ワクチン接種とは無関係であることが判明したが、メディアで広く取り上げられているため、有害事象の報告を受けて中断された。ワクチン接種率はその後1%未満に低下し、現在までこの低さを維持している。本研究では、このワクチンを接種する事っ屁のためらいの影響と、接種対象範囲を回復できる場合の潜在的な健康上の利益を定量化することを目指した。

【方法】このモデリング研究では、HPVの有病割合、スクリーニングの実践とワクチン接種率、子宮頸がんの発生率と死亡率に関するデータを使用して、日本のモデルを適合させ、2020年以降のさまざまな復旧シナリオを評価した。例えば定期的な接種率が70%に回復し、接種をこれまで受けてこなかった集団(2020年に13〜20歳)の50%がキャッチアップでカバーされるシナリオを含む。これまでのワクチン危機の影響を推定するために、2013年以降12歳で70%のカバー率が維持された反事実的なシナリオもモデル化した。

【結果】接種率が2013年以降、約70%のままであった場合と比較して、2013年から2019年までのワクチン接種率激減によって、1994年から2007年の間に生まれた集団では生涯にわたって、24 600から27 300の子宮頸がん症例と5000-5700人の死亡の追加発生が予測されている。しかし、接種しなかった集団においても、2020年にワクチン接種ができれば、これらの子宮頸がん症例14 800から16 200件と死亡3000-3400件を回避できる。

 現状のままで、2020年に定期接種が回復しない場合、2020年だけで12歳児の生涯に渡って、さらに3400〜3800人の症例と700〜800人の死亡が発生し得る。この状態が2020年以降も続くと、子宮頸がんによる予防可能な死亡の9300〜10 800件が今後50年間(2020〜69年)に発生し続ける。

図1

【結論】2013年に始まるHPVワクチン接種率激減は、日本において、子宮頸がんにより約5000人が死亡すると推定されている。 これらの死亡の多くは、予防接種プログラムが迅速に回復できれば、依然として予防することができる。


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