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【コラム】不確実性の中の確かなもの:存在と服薬

 OTC医薬品の中には、経験的に用いられている薬も多く、有効性や安全性に関するエビデンスが極めて乏しい製品も数多く存在します。先週に取り上げたキンカン®もまた、エビデンスの乏しい薬剤の一つと言えるでしょう。
 
 せき・たんに効能効果を有するネオシーダー®(指定第2類医薬品)は、煙草のように製品の先端に点火し、煙を吸入する薬剤です。ニコチンこそ含まれていないものの、もはや煙草と同じような製品であり、同薬による依存症も知られています山岡, 2007
 
 このように、有効性に乏しいだけでなく、潜在的な有害事象リスクさえ懸念される薬剤は、販売実務における不適切薬剤の代表例と言ってよいかもしれません。一方で、キンカンにしろ、ネオシーダーにしろ、薬があるというだけで、安心感を抱き、生活の豊かさが増えるということもあり得ます。
 
 害を根拠に不適切薬剤を販売しないという考え方は、医学的には合理的な判断なのでしょう。しかし、これらの薬によって救われている患者にとって、その救いを奪う代わりに、登録販売者は何を提供することができるのでしょうか。
 
 今回の【コラム】では、一般的に不適切薬剤と捉えられがちなベンゾジアゼピン系薬剤(睡眠導入薬や抗不安薬)と適正使用をめぐる生活者の視点を考察したうえで、そのフレームワークをOTC医薬品の実務販売に援用してみたいと思います。

医療的必要性と潜在的リスクの狭間で

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