花嫁の白金の剣

きらめく無数の星。
高らかに吠え、素早く動く黒い狐へと向かって降り注ぐ。
自身を奮い立たせるために鼓舞した勢いで、その星を受けつつ真っ直ぐに向かっていく。

間もなく衝突。
同時に声が上がる。

「くろむ!猛進よ!」
「イモ!まるくなる!」

外殻のある星はその場で軸をずらさずに回転する。
くるくると回る残像は綺麗な円として存在した。

派手にぶつかる音。

回っていた星は衝撃を分散させていた様子で、あまりその場から微動だにせず、浮かんでいた。
対する狐は思い切りぶつかった反動もあってか、大きく宙に投げ出されていた。
そのまま宙返りをするかのように地面に着地、する予定だった。

「ころがる」

にっと不敵な笑みを浮かべたエスコは淡泊に、しかし熱の籠った声でそう指示した。
狐は回転したまま転がってくる星を見据えて、ギリっと歯を食いしばる。

再度派手にぶつかる音。

土煙が上がり、二匹の影は…。

まだ立っている。

唸りつつ、相手を睨み上げるその眼差しと、しっかりと四肢でその場に居た狐は吠える。
艶やかな毛並みは乱れ息も絶え絶えだが、その身でしっかりと攻撃を受けた。
いや、覚えている技――まもる、で凝固な鉄壁のまもりを展開したようだ。

「なんや白露。指示せぇへんのか」
「…」
「だんまりしてるとエスコ様が勝つで!!行け!イモ!!」

仁王立ちする堂々たるその姿から発せられたのは。

「だいばくはつや!!!!」

『…ん?』

「イモ!!いけ!!!」

『何言うてんのエスコ』

星は困惑しながらその場に漂っている。

「今ならいけるやろ!!」

『無理に決まっとるがな…』

しかし星は考えた。何も考え無しにそんなことを言う者でもないということを。
まぁ…大爆発とまではいかんでも、近しいことはできなくも…いや、いやいや。

わけが分からんと思いながらも、星は動き。

スピードスターところがるの技を応用し。

小爆発を起こした。

爆風を感じるのも一瞬だった。
しらつゆは何を指示したか。

「…あなたの身を守りなさい」

無作為に飛んで爆ぜる小さな星達は、地面を抉り取っていく。
そして、狐の顔のすぐ横を何かが掠めた。

まずい。

本能がそう叫んだ。

『しらつゆ!!!』

爆風が収まった後には、中途半端に人へと変化した自分がしらつゆを抱きしめ…。
肩口には白金の刃が刺さっていた。

鼓舞した後に捨て置いた彼女の剣。
それだった。




ドクリと滴る血なんて知らない。
お前の指示も知らない。

ごめん、理解してやれなくて。





「勝負、あったな」

その言葉が、バトル終了の合図だった。


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