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四叶草

日差しが強くなるお昼時。ラウルタウンで催されている音楽祭の賑やかさも一層溢れかえっている。
人の往来に気を付けながら一通り歩き回っていたタオズは、ハンカチを取り出して汗ばむ額に押し当てた。
暑いのは夏真っ盛りのせいでもあるが、もう一つ理由がある。

「うーん……?キミは誰かの手持ちではなかったりするの?」

肩から首周りにかけて鎮座するピンク色のオオタチに話しかけ疑問符を浮かべる。
冬場ならば、そのふわふわの毛に覆われた身体の温かさが嬉しかったかもしれないが、この季節的には相性が悪いと思う。
話しかけられたオオタチはその瞳を一度瞬かせ、するりと足元へ降り立った。
直ぐ近くを一緒に歩いていたデンリュウのヨウリンと、デカヌチャンのシンイェンの手を順番に握ってペコリと頭を下げて挨拶のようなことを始めている。

疑問符が増え首を傾げつつその様子を見守っていると、何かを訴えているような鳴き声を発しながら、短い前足でこちらの手を握ってきた。

「ボク?」

お願いをされているようなそんなキラキラとした瞳にタオズを映しながら、何度か首を縦に振っている。
これは仲間に入りたいというそんな感じなのだろうか?ということは、先程ヨウリンとシンイェンへ頭を下げていたのも納得はいく。
挨拶された二匹は特に嫌がる様子もなく、こちらを見ているようだ。

「ふふ。じゃあクゥちゃんにも挨拶してもらえたら、考えようかな」

手を離してオオタチの頭を一撫でする。嬉しそうに目を瞑るその姿が可愛く、こんなに人懐っこくそして色違いであるのに今まで誰かの手持ちになっていなかったのか疑問にも思った。
野生にしては綺麗すぎるような気もするし、色違いなだけでも心無い人間に狙われることもありそうなものだ。

もう少し様子は見た方が良いかなと判断し、現在どこかへ行ってしまったピィのクゥシンを見つけるまでは、空いているモンスターボールに手はつけないことにした。

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小さな幸せを分け合っていこうね。

小さな幸せでも皆の分を合わせれば大きな幸せだよ。

大きな不幸も分け合っていこうよ。

大きな不幸は皆で背負えば小さな不幸になるはず。

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昔の仲間に言われたそんな言葉をふと思い出す。
どうして今そんなことを思い出したのか。

気付けば公園の草むらへダイブしていた。

……あぁ、また転んじゃったな。

でも、良っか。気にかけてくれる子達がいるのがボクの小さな幸せ。
それに珍しいものが目の前にあるから不幸じゃないかも。

「ね、皆。四葉のクローバー見つけたよ」

皆に平等にというわけにはいかないだろうけど、良い事がありますようにと願おう。
欲張り過ぎないように、気を付けてね。

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