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最初の展示。

笠間の陶芸大学校を卒業して丁度一年というタイミングで笠間工芸の丘で、同期の卒業生が集い「一年後展」をやりました。2018年の4月のことです。これが僕にとって最初の展示となりました。花瓶やコンポート皿、普通のお皿、ヨーグルト用のカップやマグカップ、箸置きまで作りました。その中にしれっと3体のコンタクターを並べました。この時のコンタクターは、花瓶のような胴体を意識し、それに頭がのっていて、羽根や手が付いてるだけの何だか分からない置物として存在していました。顔もあまり可愛くならないように片目だけ付いているといった具合に、あくまでも日用品と同化させることを徹底しました。そうすることで、コンタクター自体は小さくても全体として、大きな広がりを感じさせたかったからです。同化させることに大きな役割りを果たしているのは、フォルムと模様です。フォルムは膨らんだり縮んだりしながらどこまでも続いていくようなイメージで作りました。それに付随する網目模様もフォルムに沿って続いています。当時は、イスラム美術をとても意識していました。可視的物質世界を超えて広がる無限のパターン(アラベスク模様)は僕にとってひとつの憧れの世界でもありました。イスラムの社会では偶像崇拝は禁じられていましたが、人ならざる存在で、なおかつ人のように思考力を持つとされるジン(アラジンと魔法のランプに登場するランプの精など)は存在を認められていました。僕が作った最初のコンタクターはイスラムの社会で云うジンに少し似ているのかもしれません。


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余談になりますが、この最初の展示ではコンタクターは非売品で、それに、コンタクターという名称すらありませんでした。まだ、試作段階であり、売れることも頭にありませんでした。幸いなことに興味を持ってくれた方が何人かいらっしゃって、販売するには名称を早急に考える必要があるなと思い、当時、講師として少しだけバイトしていた南青山工房の生徒さんに相談し、答えの出ぬまま、自宅へ帰る電車の中で思いついたのが“コンタクター”という名称です。キャラクター名ではなく、あくまでも人間とコンタクトを図ろうとする性質を持つ未知の生命体の名称として名付けました。最初の展示としては上々の出だしだったと思います。けれど、僕自身は食器などの実用品に興味があまりなかったので、器作家と思われるのが怖くなり、同じような作品を作ることはなくなりました。

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