エリクソン/ロッシ著『二月の男』を読んで

二月の男のアプローチ


1945年の非公式な形のデモンストレーション

ミス・キャメロン
エリクソン先生の秘書で、このデモンストレーションを速記した。

フィンク医師
当時はインターンであり、患者であるミスSをエリクソン先生に任せた医師であり、デモンストレーションに同席した。

新規にケースの精神力動を調べる際に、自発的な無意識の連想に頼ったという点においては、確かにエリクソンは直感的でした。催眠経験の現象学的な現実を評価するために「フィールド実験」を始めるにあたって、確かに風変わりだったかもしれません。しかし、催眠を体験させるために、言語的、非言語的に注意深い用意がなされているとエリクソンはいつも言っていました。それは、患者の個性と可能性を利用しようとする時、理に叶っていると言っていました。この本でのエリクソンの解説は、エリクソンの遺言とも言うべきもので、自分が行なってきた催眠療法において、「意識を広げること」「新しいアイデンティティを作ること」へ、ユーティライザーション・アプローチを用いた革新的な治療と思考を展開しています。

pp.28-29

トランスの開始と暗示の五段階

1. 被験者の注意は集中している
2. 被験者の習慣的なメンタルセットが弱められる
3. 被験者は心の内側の創造的な内面が探索されていることを、全く理解しないでいる
4. 内面の探究は、無意識のプロセスを起動させている
5. それは、創造的な催眠反応の準備をする

p.37

エリクソン:幼児は何か聞いたら、すぐに学習を始めます。何が話されていて、どんな意味かと考えるのです。

p.45

1. 反応の可能性をすべてカバーし
2. 混乱を喚起し
3. 否定・肯定両方の応答ができるような質問をすればよいのです

p.53

エリクソン:私たちはここで中断できますよ。あなたに、この質問に答えたくないと思って欲しいのです。あの花には、好きになれない何かがありますね? 

p. 54

初めて握手した時がいつだったか、なかなか思い出せません。思い出すことができませんね……初めて握手したその翌日であっても。そして、あなたは最初に握手した時から、現在までに起こったことを忘れてしまえば、その間の記憶がないので、その記憶にもっと、もっと近づけますね。

p.79

エリクソン:(省略)…質問への答え難さを、身体の知識に転嫁するのです。あなたの髪の毛は、伸びる方法を知っていますというようにです。

p.94

ロッシ:エリクソン先生、セラピストのアイデアを押しつけるのではなく、患者個人の学習プロセスを引き出すことを、あなたの催眠療法的なアプローチはーあらゆる間接的な暗示を利用しながらー目的にしていますーという見方に何かコメントはありますか?これが、あなたのユーティラゼーション・アプローチの核心ですね。

p.95

エリクソン:(省略)…そして、概念を学習によって変化させながら、いろいろなことに関連づけていきます。

p.102

エリクソン:(省略)たぶんいつの日か、あなたはどんなに怖がっていたことかと、笑えるようになります。そうなったら素晴らしいですね?

pp.142-143

エリクソン:「それで、あなたは咳をして、ヘレンも咳をしました。ヘレンは不幸で、あなたも不幸でした。たくさんの同じことが、二人に起きました」しかし、「お母さんは、良いことだけを覚えていなさいと言っています」

p.144

エリクソン:少し大人になりましたね。怖がっていてもしょうがないですね?成長するって素晴らしいですね。

p.148


エリクソン:「純粋な」右脳側の機能、左脳側の機能があるとは思っていません。しかし、物事を完全に受け入れる以前には、右脳側が機能するのかもしれません。

p.156

ロッシ:日常生活の中で、周りの人がどのように成長するか気づいて、その中に楽しみを見つけてください。このように生活の中で、利用したり、認識したりというレッスンをして、「患者」の学習を援助する中で得られる驚きとユーモアを楽しんでください。そして、自分なりの意識と理解の固有のパターンをつくるために、次の世代の生まれ持っての権利(birthright )を大事にしてください。

pp.163-164

エリクソン:(省略)…楽になって、深く、深く、ぐっすり眠るまで、リラックスしてください。簡単に深くなり、ぐっすり眠って。そして、深く、ぐっすり眠って。“そして、ぐっすり眠っていることを私に教えるために、左手側ゆっくりあがります。”簡単に深く、ぐっすりと眠るまで手を上げないというのではなく、あなたがぐっすりと眠った時に。そして、私にわかるように、どんどん深く眠って、どんどん深く眠って、私の暗示で、あなたの右手は、持ち上がります。そして今、左手は持ち上がって、私に教えるように、深くぐっすり眠っています。

pp.225-226

エリクソン:(省略)…その感覚を経験しながら、何かを忘れたことを理解して欲しいのです。

p.230

エリクソン:「月曜日かも、しらませんし、土曜日の可能性もありますし、金曜日のことかもしれません」。土曜日の前に、金曜日が来ますし、月曜日の前に土曜日が来ます。私は時間を遡っています。

p.231

ロッシ:子どもがおもちゃを欲しがるように、期待と楽しいなぞなぞ遊びがそこで始まっています。恐怖を克服することは、被験者が考えを巡らせるパズルである、というアナロジーがここにあります。

p.248

エリクソン:その通りです。セラピーとは、患者自身のプロセスを患者が使えるようにすることです!

p.254

エリクソン:すべての個人は、異なる背景を持っています。

p.255

エリクソン:(省略)…小さな子どもの時に、良い点をいっぱい持っていたことを本当に感謝してください。なぜなら、その小さな子どもは、含意を理解せず、物事の重要性も理解せず、あなたにとって重要ではないことを求めていたからです。

p.316

エリクソン:そうです。「今、そのことを考えると、弱いから泣くだけでなく、強くても時には泣くのだということを理解しています。強い人であっても、楽しい時も悲しい時もあることが理解できます…」と私が言ったようにね。それは、単純な子どものレベルからもっと成熟した大人の見方への変更です。「しかし、人生において、失敗はあります。失敗は、人生を成功させるのに、必要なことなのです」。

p.318

引用文献
ミルトン・H・エリクソン
アーネスト・ローレンス・ロッシ
横井勝美=訳
(2013)ミルトン・エリクソンの二月の男ー彼女は、なぜ水を怖がるようになったのか 金剛出版

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