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クリスティアン・エリクセンに恋してる

エリクセンを知ったのは、ボクがユベントスに戻った2017-18シーズン。

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦で戦う事が決まり、当時は対戦相手についてほとんどの知識を持ち合わせていなかった為に、スパーズの試合をチェックするようになった事がきっかけだった。


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スパーズにはハリー・ケインやデレ・アリ、そして同じアジア人のソン・フンミンなど派手にゴールを決める選手がたくさん所属していたものの、その中でもボクの目を惹いたのは、少し控え目に見えたデンマーク人ミッドフィルダーだった。

彼のプレーは目立ちはしなかったけれど、とにかく正確で、そして逞(たくま)しくもあり、すぐにある選手の名前が頭に浮かんだ。


---ブラジミール・ユーゴビッチ


ボクの生涯のアイドルであるユーゴビッチ。

彼のプレーを思い出させてくれた。



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ユーゴビッチは1990年代から2000年代初頭に活躍したミッドフィルダーで、ユベントスでの在籍期間は1995-1997までのわずか2シーズンと短かいものではあったが、ボクを魅了するには十分な時間だった。

このユーゴスラビア人は中盤であればどのポジションでもこなし、そしてどのポジションでも高い戦術眼とスキルを披露した。特にジダンが加入した1996-1997シーズンは主に中盤ダイヤモンドの左サイドに配置され、トップ下に君臨するジダンをフォローする役割を任された。更にジダン不在時にはトップ下にも入り、当然のようにそのポジションをそつなくこなした。

そしてこのシーズンは、ユベントス加入初年度となったジダンが世界にその名を轟かせた年でもあったのだが、ジダンがあれだけ活躍できたのは「傍らにユーゴビッチがいて、マークとボールを散らしたからだ」と今でも思っている。これは「たら、れば」の話になってしまうが、あのシーズンにユーゴビッチがユベントスにいなければ、ジダンのサッカー人生はこれほどまでに華やかにならなかったのではないか、とさえ考えている。


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果たしてユベントスがスパーズと対戦する時には、ボクはすでにエリクセンの虜になっていた。ボクが彼の凄さを理解したのではなく、彼がボクを魅了したのだ。知ろうとしたのではなく、見ているだけで好きになってしまった。例えるなら一目惚れのようなものだろうか。いや、もしかしたら昔の恋人の影を重ねていたのかもしれない。

そしてエリクセンはユベントス相手に躍動し、フリーキックから見事なゴールを決めて見せて、それはボクにとって決定的な瞬間になった。


そのシーズンが終わった後も、ボクはエリクセンを追い続けた。時間があればスパーズの試合を観戦し、彼の両足から放たれるパス、ドリブル、シュートに感嘆し、いつからか「ユベントスでプレーしてくれないだろうか」と夢を見るようになった。

そして迎えた2018-2019シーズン終了後、エリクセンの周辺が一気に騒がしくなる。彼が「新しいチャレンジをしたい」と口にして、各メディアはこぞって「行き先はレアル・マドリー」だと断言した。状況を鑑みても、スパーズとの契約交渉に応じていないエリクセンは、1年もすればトランスファー・フリーの身でロンドンを去る事になり、それはスパーズにとっても絶対に避けたい状況である事は明らかだった。そうであれば「1億ユーロ」とも言われた移籍金を残して、マドリーへ旅立つ事は既定路線だと誰もが考えたが、それは叶わなかった。

その理由はハッキリとしていないし、ボクは知ろうとも思わなかった。それよりも「ユベントスが獲得できるチャンスがあるのではないか」と言う想いで頭がいっぱいになった。


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しかしその願いもむなしく、冬のマーケットでエリクセンが選んだのは、ユベントスとスクデットを争う直接のライバルであるインテルだった。彼はビアンコネロではなく、ネッラズーロのユニフォームを身に纏った。

今回の移籍劇に関しては、「ユベントスは手を引いていた」と報じられており、恐らくそれは事実なのだろう。そうでなければ、この希代のミッドフィルダーを、インテルがわずか2000万ユーロの移籍金で獲得できたはずがない。確かにユベントスが獲得しなかった事は残念ではあったが、エリクセンがユベントスを蹴った訳ではない事は、心の痛みを少しだけ和らげてくれた。


ボクがエリクセンファンを公言している事もあり、「残念でしたね」と声を掛けてもらう事があけれど、「すでに終わった話」ではないと思っているし、むしろセリエAに来た事をチャンスだと捉えている。

年齢もまだ28歳。彼のスキルの高さとプレースタイルを鑑みれば、これから長い時間を第一線で活躍するに違いない。そして何よりも、ユベントスはインテルと国内リーグで最低でも2試合は相見える。これまでにもロナウドが、デ・リフトが相手チームの一員としてアリアンツに足を踏み入れたように、エリクセンもその場所でユベントスの素晴らしさを感じ取ってくれるに違いない。

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ボクがユーゴビッチと出会ってから実に25年近くの月日が経とうとしていて、そしてエリクセンの存在は、あの頃の若かりし日のボクをも思い出させてくれている。ジネディンヌ・ジダンのプレーに驚愕し、パオロ・モンテーロのファールに声を挙げ、デル・ピエーロの全てに酔いしれ、そしてユーゴビッチのプレーに目を奪われたあの日のボクに。


自分の力ではどうなる事ではないのは分かっているし、もしかしたら可能性は高くはないのかもしれない。それでもボクは楽しみに待っている。

「ERIKSEN」の文字が入った、白と黒のユニフォームを購入する日が来る事を。

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