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チェコ買い付け日記2023⑮「旅先で待ち合わせ」

海外で知人と待ち合わせをする。
なんだかとても旅慣れているようで憧れていましたが、私の初めての旅先での待ち合わせ相手は、ヨゼフ・ラダの子孫でした。

何度も書いているけれど、この仕事を始めたきっかけがヨゼフ・ラダです。
司書の仕事を辞めて絵本に関わる仕事がしたいと思ったときに、世界中に好きな絵本作家がいる中でチェコを選んだのはヨゼフ・ラダがいたからでした。

今回買い付けに行くにあたって注文したラダグッズを受け取るのと併せて、いつもメールでやり取りをしているMartinさんと Viktorさんに挨拶をしたいと思っていました。
Martinさんと Viktorさん兄弟はヨゼフ・ラダのひ孫で、ラダの娘アレナのお孫さん。現在はお二人でラダとアレナの作品の管理をしています。
最初に「ラダのグッズを日本で扱いたい」とメールを送ったときにはそんなことは知らなかったので、返ってきたメールの署名の苗字に「Lada」と書いてあるのを見たときには目を疑いました。

今回、プラハで会うことになったときに、どこか私が行ったことのない場所を案内してくれることになり、ヴィシェフラド城を提案してくれました。

待ち合わせをしたのは地下鉄Cラインのヴィシェフラド駅。地下鉄だと車窓が楽しめない。待ち合わせまで時間もあるので、近くまでトラムで行き、そこから駅まで歩くことにしたのですが、私の誤算は地下鉄の駅が地下にあると思い込んでいたことでした。

地図で見るとトラムを降りて、角を曲がって100mほど歩けば地下鉄ヴィシェフラド駅のはずなのですが、Google先生の言うとおりに歩いていくと、なぜか横道に外れ、線路の下をくぐる歩行者トンネルを通り、急な階段と急な坂道を登らされ、たどり着いたのは小高い、というよりはむしろ高い丘の上でした。
ヴィシェフラド駅はヴィシェフラド城の最寄りの駅で、城と言うからには平坦な訳はないのです。
私が「角を曲がれば」と思っていたのは高架の橋で、トラムが走る地上の道路のはるか上空を走っているのでした。もちろん地図は間違っていないし、山も谷もある地形を平面の地図にするって大変だなと思います。
地下鉄でそのまま行くと気づかなかったであろう高低差。結果的には良かったのかもしれません。

「ヴィシェフラド駅で待ち合わせをしましょう」というメールのやり取りしかしていなかったので、駅のどこにいれば良いのか迷いましたが(駅に改札口はありません)、プラハの中心部から来るであろうと予想して、そちら側のホームで待つことにします。
ヨゼフ・ラダのひ孫と駅で待ち合わせ…人生って不思議だな、とつくづく思います。
SNSで何となく顔は見たことがありますが、アジア人から見ると欧米の方は区別がつきにくいので、分かるだろうかと、そわそわキョロキョロしていると、電車から降りてきた人たちの中によく似た男性二人組がいて、こちらに向かってニコニコしながら歩いてきます。Martinさんと Viktorさんでした。

お二人はとても親切で、私の拙い英語にも一生懸命耳を傾けてくださり、お城の敷地やそこから見える風景を案内してくださり、カフェでお茶をご馳走になり、もちろん注文していた商品も受け取りました。
ヨゼフ・ラダの子孫にお茶をご馳走になる日が来るなんて…この日何度目かの同じ感慨に耽りながら、ラダ兄弟との会合は終了しました。

後で考えるとお二人の写真を撮らせてもらえば良かったと後悔しました。緊張していたからなのか、ぼんやりしているからなのか。Martinさんが自分たちのSNSに載せたいからと3人で撮ったのに。
まあでも、絶対にまたお会いするのだ、次はぜひ写真を撮らせてもらうのだ、と新しい目標を掲げるのでした。


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