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映画時評2024

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2024年に劇場公開した映画のレビュー記事をまとめたものです。
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記事一覧

【映画時評】マッドマックス:フュリオサ

前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、アクション映画の極北、一つの到達点を示した作品といえて、そのルーツはジョン・フォード監督による1939年の映画『駅馬車』にまでさかのぼる。 駅馬車に乗り合わせた搭乗客と、馬を駆るアパッチ族との銃撃戦のクライマックスシーンは、“移動しながら戦う”というアクション映画の定石を打ち出すものだった。 ジョン・フォードのアクションに魅せられた監督は、スピルバーグとか(フェイブルマンズのラストね)黒澤明、宮崎駿まで、それぞれ息もつかせぬスペ

『WMH』とタル・ベーラの映画

タル・ベーラは1977年から活躍するハンガリーの映画監督で、代表作である『サタンタンゴ』は7時間18分という長大な作品として知られている。 すでに引退ずみですが、名実ともに巨匠の域にある監督といっていい。 2022年には日本初公開だった、『サタンタンゴ』以前の過去作が一挙上映し、再評価の波を感じる。僕はこのとき初めて名前を耳にして、実際映画に触れるのは今年になってようやくだった。 今回は『ヴェルクマイスター・ハーモニー』を劇場で見ることができたので、その感想をメインに、予

【映画時評】REBEL MOON

『三体』が見たくてネットフリックスを契約した私ですが、せっかくなので、契約を切る前にほかにもなにか観たい。 そういえばザック・スナイダーの新作があるなあと思って、期待せずに『REBEL MOON』を再生ポチ。 感想をひとことで言うと、ボンクラオタク映画だった。なかなか笑かしおるので、つい感想を書きたくなってしまった。 『REBEL MOON』はNetflixオリジナルの映画で、二部作存在する。 パート1は去年の12月に配信、パート2は今月配信された。 両方一気に見たので、以

最近の映画はなぜ長いのか【映画時評】『デューン 砂の惑星PART2』

原作は1965年出版のフランク・ハーバートによる小説で、幼いときにこれを読んだ監督が、ずっと映像化したいと心に念じていた一作である。 過去に二度の映像化と、一つのボツ企画が立ちあがったことがあり、初めは1976年に『ホドロフスキーのDUNE』として結実するはずだったが、未完のプロジェクトとなってしまった。 ホドロフスキーといえば、『エル・トポ』や『ホーリーマウンテン』といった、シュルレアルなアート映画を撮る監督で、その監督が急にSF超大作を撮るという暴挙に出るわけですが、こ

【映画時評】哀れなるものたち

去年から楽しみにしていたヨルゴス・ランティモスの新作。かれの過去の映画を見ていて感じたのは、キューブリックのような、ドライで突き放した人間描写と、皮肉っぽいユーモアで、ギョッとする映画が多いことだった。『女王陛下のお気に入り』と『聖なる鹿殺し』を初めにみたものの、これははずれだった。それからしばらくして『ロブスター』を観たとき、この監督のことが好きになった。『ロブスター』はラブ(ブラック)コメディとでもいいたい、ディストピア世界で繰り広げられる、バチェラー争奪戦で、独身者は4