整骨院はアトラクション。
まじ最近腰の痛みがやべーっつーことで、整骨院に行ってきました。
なんか初めての場所ってこえーから行かなきゃなーとは思いつつ行けてなかったのね。
てか知らない人に自分の事を話してそのままそこで施術してもらうって凄くね?コミュニケーションレベル6くらいないと達成出来ないミッションじゃね?
なーんて思ってたけど、結果、行って正解だった!整骨院まじおもしれえ。
まずね、入ってすぐ受付。
初めてだからカルテ的なのに何処が痛むか、いつから痛むか、施術にクリーム使うけど大丈夫か、みたいな事を書いていく。出来たばかりの整骨院だから内装がまあ綺麗。木をふんだんに使った、木の匂いがしてくるほどの暖かい内装。緊張はするものの、その内装のおかげで心は落ち着いているのが分かる。
書き終わったカルテを受付に渡し、しばらくすると先生がやって来た。
大人らしく挨拶を交わしつつ、「ちょっと背骨を見てみたいので立ってみてください」とのこと。先生を後ろにした形で立つ。すぐに肩からファファっと触り出す先生の手。その手が僕の背中の真ん中に来たあたりで「おおっ」という先生の声が聞こえた。
どうやら僕の背中は先生が今までに見たことない形で変形してしまっているそうだ。そこが原因で、至る所に痛みが出ているのですよ、と。びっくりして声出ちゃいました、だって。かわいいかよ。
しかし、ほへぇ~、そんな事がすぐに分かるなんて、さすがはプロじゃのう、なんて事を思っていると「ではもうしばらくお待ちください、そこに漫画とかもあるので…」と言われたので、指さされた本棚を見る。ラインナップは、
『大きく振りかぶって』
『クッキングパパ』(でも5冊くらい)
『丘(がく)』
『バガボンド』(20数巻までしかなかった)
あとは知らない漫画、子供用の絵本くらい。
少し迷って、『バガボンド』の1巻を手にした。
うわー、井上先生ったら、スラムダンクの後にどんな漫画を描くのかしらと思ったら、時代劇?!宮本武蔵!?しかもまあまあグロい!?なんでや!まじか!でも絵、うまぁ!話、おもしろぉ!あたい、宮本武蔵なんて青山剛昌作の『YAIBA』で得た知識しか無かったわよ。なにこれおもろー!
と、10数年前に思った初見の時を反芻しながら第1話を読む。武蔵(たけぞう)かっこいいなぁ。
って思ったくらいに名前を呼ばれた。いやバガボンド面白いからもうちょい読みたいんですけど~???今度セット本でも買うか…なんて思いつつ案内されたのはウォーターベッドであった。
案内してくれた女性に「ウォーターベッドはご利用になったことありますか?」と聞かれた。
じょ、女性にウォーターベッドを使ったことがあるかなんて…/////い、いえないよ…郷ひろみくらい言えないよ…/////
…なんて事は思わず、「ありません」と応える。
薄暗い部屋に設置してあるそのウォーターベッドに促されるまま横たわると、文字通り、水の上に浮かんでいるような感覚を味わうことが出来た。なにこれ!楽しい~!?ゆらゆらしとるねぇ!楽しいねぇ!
「10分間あります。ごゆっくりどうぞ」案内してくれた女性…ええいめんどくさいから案女(あんじょ)とする。案女はそう言い、カーテンを閉め、出て行った。
2畳くらいのスペースに取り残される僕とウォーターベッド。耳元ではヒーリングミュージックがキラキラ鳴っていた。
そして、ウォーターベッドは動き出す。
簡単に言おう。
ウォーターベッドは意志を持っている。知性と言ってもいい。ウォーターベッド…いや『彼』は知能を持つ生命体であるのだ。
彼は僕の痛む箇所を執拗に震わしてくる。なぜ?なぜそこが痛むと分かるの??彼は何も言わない。しかし僕の心の声は聞こえている。
もう少し下…そうそこ!なんで?なんでわか…そう、そこ!そこやっぱり酷いですか??そこも痛いんですよ…はい、そこもそうですね。そこ、ああ、良いです…はい…。
物言わぬ彼は10分間、そうして僕の背中と腰を柔らかくしてくれた。やがてピーッという音が鳴ると、あれだけ波打っていた水面がしん、と静まり返る。はじめ寝そべった時はあんなに柔らかく感じたのに、施術のあとはやけにかたく感じた。
なんてやつだウォーターベッド…。お前まじカッケーよ。リスペクトだよ。そうして何人もの悩める人たちを、毎日毎日救ってるんだな。すげえよ。
次に案内されたのは、超絶!ふくらはぎ揉みほぐしマシーン(今名前付けた)である。
寝そべり、足を上げ、ふくらはぎを器具にあてる。すると、超絶!ふくらはぎ揉みほぐしマシーンは轟音を出来たばかりの綺麗な整骨院内全体に聞こえるように響かせながら僕のふくらはぎを音速の速さで揺さぶり始めたのだ。
ごうんごうんと音が鳴り、振動がふくらはぎから脳までを揺さぶる。新感覚。足が軽くなっていくのが分かる。重力に甘んじて滞っていた血液が心臓に戻っていくのが分かる。
超絶!ふくらはぎ揉みほぐしマシーンはうるせぇけど、家に一台欲しいと思った。思わされた。実際くれると言われたら悩んだ末に断りそう。うるせぇから。でも気持ちいい。
それも終わり、いよいよ施術ベッドへと促される。思いましたけど、ああいう場にはほとんど手ぶらで行くべきですね。財布があればいいくらい。メガネもケータイも邪魔。今度はそうしよう。今書くことじゃないけど。
施術ベッドにうつ伏せになる。
次はなんだろうかとわくわくしていると、どうやら「電気」らしかった。電極パッドを幹部にあて、微弱な電気を流して筋肉の凝りを緩めるのだ。業務用だからまじですげーやつ。低周波治療器とかそういうのじゃなくて、ガチのやつ。先生の気分次第では命の危険に晒すことも出来る(であろう)器具。拷問出来るやつ。多分。
いやふざけてあんま言うと怒られるなこれ。
電気治療は、あ、今僕はピカチュウになってる。と思い続けていました。電気ポケモンってこんな感じかしら、常にビリビリしてるのねぇ、みたいな。
あるいは、ハンターハンターのキルア。彼はスタンガンで受けた電気を念能力に変える能力を持った。電気なら浴びてたぜ、子供の頃からな、という名言を残している彼。電気は友達なのだろう。
僕はほとんど初対面なので、今回は挨拶レベルであった。あ、あなたが噂の電気ですか。話はよく聞いていますよ。なにやら凄いらしいですね。ビリビリっとするんですよね。凄いですね、みたいな。
僕がそうしてピカチュウになっている間、カーテンで仕切られた隣のベッドで、やたらと声の低いおっさんの施術が始まったようだった。
そのおっさんはすっかり慣れた風で、先生も雑談しながら施術をしている。
ジャンプ読んでますか?
どちらかと言えばガンガン派でした
ガンガンって、魔法陣グルグルとか、鋼の錬金術師とかですよね
そうそう
ハガレンは面白かったですよね
面白かったですね
あの作者さん凄いですよね、女性らしいですね
ああ、ハガレンの最終回あたりで出産とかされてたそうですね
へえ!あと銀の匙とか面白いですし、百姓貴族って漫画も面白いんですよ
へえ、知らないな
面白いですよ、あの荒川「ひろし」さんのご実家が北海道の…
(いや「ひろむ」な)
…ジョジョって何部まであるんでしたっけ?
(8部です。ジョジョリオン。)
え、どうかな、4部くらいしか知らないなぁ
ああ、僕も4部まで読んで、あとわかんなくなっちゃって
(いや5部も6部も面白いから!)
なーんて心の中で相槌やツッコミを入れていると、おっさんの施術が終わったらしく、僕の番になったようだ。
すっかりビリビリとも仲良くなっていたところで、パッドを外され、いよいよ「手」での施術だ。整骨院という場所における、メインディッシュ的な部分だろう。
あの施術はなんとも文章で表現しにくい。とにかく、ピンポイントで悪い部分を治療する、そんな感じだ。無駄が無い。流れるように押したり揉んだりされる。
しばらくすると「立ってみてください」と先生は言う。言われた通り体を起こし、ベッドの横に立ってみる。
「どうですか?」先生は言う。
どうって、そりゃ、腰が痛いって言ってるじゃ…え?
え?なにこれ、痛く…ない?あれ?あんなにしくしくと痛んでいた背中や腰が…あれ?え?
「痛く…ないです」
「だいぶ楽になりました?」にこやかな声で先生のは言う。
楽に、なった…??な、なぜ、こんなに早く…?!うそだろ…今まで腰が痛くて仕方なくて、酷い時は寝れないような日もあったというのに。
「良かったです。しばらく週2くらいで通ってみてください」
「はい!」
僕はシンプルにいい返事をしていた。強豪野球部の点呼確認くらいいい返事してた。腹から声出てたもん。先生も逆に引いてた。なにこいつ、強豪野球部の点呼確認みたいな返事しやがって、みたいな。
まあそれは嘘だけど、腰痛が和らいだことが嬉しかったのだ。
わからない人に言うと、腰痛というのは腰に常に5キロのお米の袋をぶら下げてるような感覚があるのだ。重たい。筋肉が悲鳴をあげてる、だるい。みたいな。
そのお米の袋が、2キロくらいになった感覚があった。軽い。快適。
これがいずれ重みを感じなくなる日が来るのかと思うと、出るでしょ。強豪野球部の点呼確認みたいな「はい!」が。
どよん、と前屈みで入ってきた入口を、すん!と胸を張って出ていく。
夏の熱気がすぐに肌を刺したけど、暑さを感じるよりも、腰に残る温かみ(湿布によるもの)が僕を元気にしてくれている。
ありがとう。これでなんとかこの猛暑を凌げるかも知れない。僕は、さて今週は何曜日にまたお伺いしようかと頭の中で考えながら、車のハンドルを握ったのだった。
こんな駄文をいつも読んでくださり、ほんとうにありがとうございます…! ご支援していただいた貴重なお金は、音源制作などの制作活動に必要な機材の購入費に充てたり、様々な知識を深めるためのものに使用させて頂きたいと考えています、よ!