死亡事故も発生している「首輪型/首掛け型浮き輪」は入浴育児サポートグッズにはなりえない。

 生後4ヵ月の乳児に赤ちゃん用の「首輪型の浮き輪」を使いお風呂に入れて、親がしばらく目を離していたところ、乳児が呼吸停止の状態となり救急搬送されたという情報が、東京都消費生活総合センターに寄せられました。

https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/attention/ukiwa.html

 2012年6月に、東京都が公表した「首輪型の浮き輪」使用による事故。その翌月、消費者庁と国民生活センターからも、「首掛式の乳幼児用浮き輪を使用する際の注意について」公表されました。
 日本小児科学会の山中龍宏先生がコメントを寄せてくださっています。

 子どもの身の回りに新しい製品が出回ると、新しい事故による傷害が 発生する。 乳幼児の事故は 1 件起きると、同じ製品で他にも数多く起きているとされており、今回の入 院した事例と同様の事故が多発している可能性があり、早急に対処する必要がある。
 首浮き輪は、運動能力の低い乳児の口や鼻のすぐ下に大量の水がある状況で使用する器具で ある。乳児の口や鼻が水に浸かった状態が 5 分以上続けば、極めて重症度が高い傷害、あるい は死亡する可能性がある。これらの調査結果をもとに、わが国では入浴で使用されている実態 があるため、現在の首浮き輪は危険性が高いと考える。

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20120727_1.pdf

 このような注意喚起がなされたにもかかわらず、その後も、事故は起こり、死亡事故まで発生しました。なぜなのでしょう。

 2012年の注意喚起でも事業者名が公表されている、スイマーバ正規総輸入代理店の有限会社FUNAZAWAによる公式アカウントは、このようにツイートしています。

 確かに、子どもから目を離したことで事故は起こったのでしょう。しかし私はその理由のひとつに「首輪型/首掛け型浮き輪」の売られ方に問題があるよう思います。

 2012年の注意喚起文書でもその点が指摘されているのですが、「プレスイミンググッズ」として「使用している間は絶対に子どもから目を離さない」ことを前提として使用する製品のはずなのですが、「シャンプーするとき大変・・・スイマーバで遊んでいる隙に両手でさっと洗えちゃうから重宝してます」など、入浴時の育児サポートグッズのような誤った売られ方が紹介されていました。

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20120727_1.pdf

 このような広告表示を目にすれば、いわゆる「ワンオペ育児」に困っている方が、入浴時の育児サポートグッズとして購入してしまっても仕方ないことかと、私は思います。「常に目を離さない、ひとりにしない」ことが必要な、誤った使用法で死亡事故が起きかねない商品を、育児サポートグッズと誤解させる売り方で販売しないで欲しいものです。

 昨年7月にも消費者庁は「子どもが浴室で溺水し死亡する事故が多く発生しています。」と注意を呼びかけました。そこに「溺水から子どもたちを守るために」と題したコメントを寄せてくださった、坂本昌彦先生のYahoo!個人記事を最後にご紹介します。坂本先生の思いが、子どもたちを守りたいと思う人たちに広く共有されますように。

  溺水は病院に搬送して集中治療を施しても救命できなかったり、重い後遺症 を残すケースも少なくありません。だからこそ予防が大切になります。 溺水予防のために「溺れるときは静かな可能性がある」1 ことを知っていただ きたいです。このメッセージは、「だから目を離すな」という風にとらえられが ちですが、そうではありません。子育てはマルチタスクの連続で「目を離す瞬間 はあるのが子育て」です。それを前提に、どのような予防策が有効かを考えたい です。