ダウン症のある子どものリハビリについて 質問&回答 その9

小児地域リハビリテーション研究会に寄せられたQ&A

Q:2020/6/17 15:10 当事者のご家族  

大変素晴らしい講義、ありがとうございました。筋緊張の低さが当面の問題だということは理解できたように思います。しかし筋緊張を高めるにはどうすれば良いのか分かりません。そもそもなぜ低緊張になるのか、その神経学的基盤に対してどのようなアプローチが適切なのかご教示頂けると幸いです。また、その際主動筋と拮抗筋のバランスをどう考慮すべきかについても、お分かりになればよろしくお願いします。

A(真野Dr):筋トーヌスは安静時の筋肉の張りのことです。筋力とは違います。胎児は羊水に浮いています。筋トーヌスも低いと思われます。新生児は低緊張です。成長とともに筋トーヌスが上がってくることが知られています。通常は、3から4か月頃に腹筋の筋トーヌスが上がってきて、手足を持ち上げるようになり、寝返りの準備をします。
筋疾患(筋ジストロフィーなど)や、重度障がい児も低緊張で、その状態が長く続きます。ダウン症児は筋トーヌスの改善が非常にゆっくりです。そして7歳頃にはほかのお子さんと変わりなくなります。


筋のトーヌスを維持する反射は、単シナプス反射です。トーヌスを上げるには、受容体(筋紡錘)への情報量を増やすことです。質量(筋肉量、体重)と重力がポイントです。

ダウン症児はなぜ低緊張になるのでしょうか?原因はわかっていません。
医療関係者を含め、ダウン症児の低緊張は一生涯続くものと思われていたようです。
低トーヌスそのものに対する治療、リハビリは確立されていません。脳性麻痺のリハビリは、原始反射の抑制、姿勢反射の促通などの中枢神経の促通手技です。低緊張に対しての治療ではありません。
一方で中枢性疾患の場合も低緊張になります。中枢で筋トーヌスを維持する部位は小脳です。小脳を障害されると低緊張になります。(失調)

関節の動きは、主動筋の緊張と拮抗筋の収縮という複数のシナプスを介する反射です。低緊張の場合は、屈筋と伸筋を同時に収縮して(共収縮)してバランスをとります。共収縮をいかに促通するかがポイントです。
共収縮の場合の筋肉の収縮方法は、筋の長さが一定の収縮方法(等尺性収縮、isometric concentration)です。息を止める、踏ん張るなどの動きが必要です。
共収縮を教えるためには、低緊張の筋肉を選択的に指導するとよいです。腹筋は背筋と一緒に補助して動きを教えましょう。
発語に関する筋肉(腹筋、背筋、横隔膜、嚥下に関する筋肉、舌、軟口蓋など)は低緊張の影響を受けやすいです。つまり低緊張に対して、言語治療が大切であると思います。
低緊張に対するリハビリは、確立されていません。私たちも手探りで行っています。
我々の研究会でも、低緊張に積極的に関わっていくようにしています。
有効な方法がありましたら、ぜひご教授いただきたいです。

【参考図書】
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド おうちでできる練習BOOK 原著第2版

ダウン症ー書籍

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