ダウン症のある子どものリハビリについて 質問&回答 その19

小児地域リハビリテーション研究会に寄せられたQ&A

Q:2020/7/18 21:51 当事者の家族 2歳9ヶ月
勉強会を大変興味深く拝見させていただいております。現在2歳9ヶ月の息子は、歩けるようになったので地域施設でのPTは卒業となりました。が、階段の上り下りやジャンプなどの動きはまだまだできず、そういった運動機能についてのアドバイスをいただけるところがございません。自己流で毎日練習していますが、正しい教え方や動きができているのかどうかわかりません。また、PTで膝立ちの体勢をとる指導をしていただけなかったのでハイハイをすることがないまま今に至ります。以上のことから素人ながら、上り下りやジャンプは膝を曲げて行うものかと考え「膝の使い方がわかっていないのではないか」とも思います。しかし歩けるようになりじっとしていないので、膝を曲げた体勢をとらせるというのもなかなかできません。遊びや日々の家庭での生活の中で、上り下りやジャンプ等ができるように促せるような動き・運動はありますでしょうか?自我もでてきているため、楽しく遊びの中でできるような動きがあれば教えていただきたく存じます。

A(真野Dr):療育センターは肢体不自由を対象にしているので、これから伸びていくダウン症児も歩ければ卒業になってしまいます。PT,OT,ST受けられる環境を整えていきたいと考えています。工夫してお子さんの成長を促していきたいですね。今回の本が参考になるとよいです。

よく分析されていらっしゃいますね。
運動学的には、ハイハイは、膝で支持して骨盤の回旋を教えることで、歩行と同じ動きを教えます。
「歩行を洗練させる」ことに通じます。
膝を使うということは、重心を落とした動作を教えることと、ステップする足の動きを教えることにつながります。
膝が使えないのは、下腿三頭筋の硬さがあるかもしれません。評価してみて下さい。マッサージも有効です。
歩けるようであれば、Stage2の練習を取り入れてください。
階段の練習はstage12で紹介しています。アメリカとは環境が違います。手すりの位置などにもこだわっています。

Q:2020/7/19 16:10 当事者の家族 6歳
6歳の女の子です。低緊張がなくなるというお話とても驚きました。たしかに娘は、今は赤ちゃんの時とは全く違い触っても固く丈夫な感じです。運動もとても大好きなので制限なくさせてあげたいのですが、でんぐり返しなどどうなのかなと思っています。来年修学に向けて、体育などこれはさせない方がいいという動き等はありますか?また、低緊張がなくなるということは、発語にも関係してくるのでしょうか?とても発音が悪く悩んでいます。宜しくお願いします。

A(真野Dr):ありがとうございます。低緊張に関する事実を、皆さんに公表するのを戸惑っていたのですが、今回は思い切ってお話しすることにしました。安心されたご家族がいらっしゃる様子がうかがえ、ほっとしています。
(本来は、エビデンスを集めて、学会で報告し、論文にしてから、世間に公表するという順番なのです。でもその間に子どもが成長してしまいます。今回はアメリカの実績をもとに、皆さんに紹介することにしました。)

頸椎に関して、1:環軸椎の問題と2:環椎後頭関節の問題があります。2の場合、下顎を引く動作はよくありません。
7歳以降であれば頚部の低緊張も回復します。でんぐり返しなど、上肢で支持する場合は、きちんとした指導ができていれば、制限することはありません。ダウン症児は一般的に手が短いので、でんぐり返しはお勧めする運動ではありません。でも、でんぐり返しができないからと悲観する必要はありません。体操競技をしているダウン症児もいます。原本には、鉄棒競技を行っている写真も載っています。

緊張の回復に合わせて、発語能力が改善します。Man to manの言語訓練が大切です。このエビデンスが十分ではなく、日本では言語治療を受ける機会が少ないのが現実です。アメリカにはしっかりと話しているお子さんがいっぱいいます。ST協会に働きかけています。
現時点では、man to manの言語訓練を受ける機会を探すことになります。言葉の教室など、理解していただけるセラピストにつくと発語能力が向上します。
ポイントは閉口、口唇の突き出し、軟口蓋の挙上、舌先の使い方などです。家族が覚えて教えてあげるのもよいです。
何とか工夫して、言葉の能力を向上させていきましょう。

【参考図書】
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド おうちでできる練習BOOK 原著第2版

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オープンチャット「小児地域リハ研究会」
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配信会場のご協力:医療法人社団雪嶺会 東京リハビリ整形外科クリニックおおた


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