ダウン症のある子どものリハビリについて 質問&回答 その10

小児地域リハビリテーション研究会に寄せられたQ&A

Q:2020/6/23 19:49 当事者のご家族  
巧緻性についての質問です。スプーン、フォークでは食事で使用できますが、お箸は握ってしまうため上手く使えません。どのように訓練していくと良いでしょうか?


A(真野Dr):年齢はいくつでしょうか? 筋のトーヌスがどの程度かの目安になります。
一方で、年齢にかかわらず、ダウン症児は上肢の練習が大切です。日本では上肢の練習が不足しています。バランスをとる使い方と巧緻動作の両方を練習しましょう。
Stage4のスキルで体幹と上肢の練習をしましょう。体幹を保持して肩甲骨を開くようにして、上肢を使う練習をしましょう。介助するときは肩甲骨の使い方を教えてください。座位が安定することも大切です。
なお、原本(Gross Motor Skills for children with Down Syndrome)には作業療法編もあります。
肘の状態、肘内障ではないでしょうか?眼鏡は必要でしょうか?(近視、遠視、乱視等はないですか)などもみてください。


Q: 2020/6/24 21:29 当事者のご家族 

立っているのが大変なのか、直ぐに座り込みます。
A(Dr真野):立位の保持は難しいスキルです。Standing without support (支持なしで立つこと) はstage5の最後の練習です。
上肢で支持して立つ練習をしましょう。つかまるものの違いで、バランス能力が違ってきます。介助して歩行練習を繰り返すことも大切です。Stage5の練習を取り入れるとよいでしょう。
生活の中では、椅子を使って座位姿勢を教え、そこから立ち上がる練習を教えましょう。

Q: 2020/6/24 22:00 当事者のご家族

3歳です。生まれつきではないのですが、下顎が出ていることが多いです。治すためにできることはありますか?原因は何でしょうか?

A(真野Dr):念のため環椎(第1頸椎)、軸椎(第2頸椎)のレントゲン検査をしておくとよいです。側面、正面(開口位)の2枚で評価できます。環軸椎の脱臼がなければ、特に制限はありません。
ダウン症児は環椎後頭関節が柔らかいです。環軸椎が関係しているのは、顎の動きです。顎を突き出した姿勢になる傾向があります。その姿勢で固くなりやすいです。特に筋トーヌスが低い年齢ではその傾向があります。常に顎を引く姿勢を教えましょう。本の中ではStage1の低緊張の時から顎を引く姿勢を教えています。(写真を参照してください) 筋のトーヌスが改善してくると、徐々に首も安定してきます。

下顎を突き出す癖をみつけたら、介助しながら治しましょう。
1、後ろから:後頭部から首の付け根の当たり(耳の後ろ)を伸ばすようにストレッチしましょう。頭を軽く上方に引き上げるのもよいです。

2、前から:下顎をひく姿勢をおしえましょう。下顎を引くには、おとがいを押します。あなたの人差し指(と中指)を顎の下に当てて、親指を軽く曲げて唇の下(オトガイ筋)にあてます。下顎を引くように押して、同時に親指を伸ばしながら下口唇をつきだし口を閉じます。口を閉じると表情が少し変わるのがわかります。「アヒルの口」の真似をするとよいかもしれません。口唇のかじり取りを教えましょう。舌が前に出ていたら口の中にもどし、口を閉じさせましょう。

背中が丸いと下顎が付きだした姿勢になります。骨盤を前傾し、お腹を引っ込め、背中を伸ばしましょう。(側面の姿勢を参考にしてください)
斜視はないですか?眼鏡は必要ですか?
心臓の手術をすると胸郭が固くなります。介助者の手を胸骨に当てて、呼吸に合わせて胸骨を下方に押し下げて、胸郭を開くようにマッサージしてください。(理学療法士に呼吸リハをお願いするとよいです)
口を開けた姿勢が習慣にならない様にしましょう。

【参考図書】
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド おうちでできる練習BOOK 原著第2版

ダウン症ー書籍

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