バビル二世について急に思いついたこと

※この走り書きには、横山光輝先生の漫画『バビル二世』に関する結構重要なネタバレが含まれます。またそれを原作としたアニメにもちょっと触れています。

 先ほど、ラジオ体操をしながらこんなことを考えていた。

「バビル二世ってやっぱり面白いな。バビル二世とヨミ様の真剣勝負ほんとおもろい」

 そこでふと思った。

「そういやバビル二世ってなんでヨミ様と戦おうと思ったんだろう。ヨミに世界征服をさせてはいけないって正義感か、それともほかに何か気に入らなかったのかな。あいつ作中ではっきり言及したことないんじゃない?」

 そう考えて、あれそういえば私、原作の漫画を全部読んだはずなのにバビル二世が何を思っていたかなどがよくわからないままだなぁと気がついた。何を考えていたか、なら多少わかる。ヨミ側がこういう風にしてきた、ならこっちはこうだという戦略はセリフと行動で逐一示してくれた。が、例えばF市での戦いの時、食料品売り場で複数組の子供とお母さんが亡くなっているそばを通って移動する際にバビル二世の胸に哀悼の意があったと断言は出来ない。どういう表情で通り抜けたかも描写がほぼなかったのだ。

 え、いくら超能力少年とはいえもとは一般家庭の出の浩一君なのに淡々としすぎだなぁ……とそこまで考えて思い出した。そういえば浩一君、バベルの塔に初めて来た後バビル二世として必要な知識をインプットされてたわ、と。

 あの時、能力とか塔の機械の使い方とかだけでなく、バビル一世の思想、考え方などもインプットされていたのではないか?

 バビル一世はめちゃくちゃ高度な文明を持つ異星人だ。不幸ななんやかんやの末に地球に骨を埋めることになっても、地球人と自分の差に悩んでいたらしい。外見はちゃんと擬態出来ていたっぽいのでその差は多分考え方など内面のことだったのだろう。その地球人離れした思想に浩一君が洗脳された……とまではいかずとも、バビル一世様はこんなでしたと教えられたものに影響されて思考のベースが地球人離れしたのなら上記の違和感にも納得出来そうだ。もしかしたら同級生の子の実家の病院に助けられた頃には彼はもう『バビル二世』であり、『怪鳥にさらわれた浩一少年』は本当にどこにもいなかったのかもしれない。

 F市編の最後らへんやヨミ様と敵対するとなった直後に現地の住民に『言わないとあの怪鳥が黙ってないぞ』と脅しをかけて話を聞きだしたところなど、正義の味方らしくない行動に出ることも多いバビル二世に対して、ヨミ様は悪役なんだけどちょっと共感できるところがあったりする。バビル二世による罠だとわかった上で窒息死しそうな部下たちを助けに動いたり、同じ力を手にしたイヌと協力しろと指図してきた自分の体内のウイルスに畜生と手を組めるかと怒ったりと、どうもヨミ様の方が人間っぽい……いや地球人っぽい。欠点は人間味であり人間味は素晴らしいものだという言葉はちょっと都合よく祀り上げられすぎだと日頃思っている私だが、なるほどこの人間味はヨミというキャラクターをさらに魅力的にするものだと思う。

 それもまた、バビル一世の思想が関係するのかもしれない。実はヨミ様もバビル一世の血を引いており、だからすごい超能力を操れるし三つのしもべに命令してバビル二世を襲わせたりも出来た。だが、バビル一世の正統な後継者として選ばれたのは浩一君だった。ヨミ様はその理由について『バビル二世には自分にはないエネルギーを吸収する能力があるから』と理解していたが、バビル一世の考え方との親和性も問われていたのかもしれない。そもそも浩一君が塔の夢を見始めたところから話は始まるが、夢を見るのは脳である。バビル一世に近い脳なら拾える電波みたいなものを塔から流してキャッチ出来た人が二世だという仕組みだったなんて妄想も出来そうだ。

 アニメ化に携わった人がこんな解釈をしたかはわからないが、子供たちが見るアニメの正義の主人公として原作のバビル二世のままだとちょっとどうかとは思ったのだろう。特に北海道の牧場が出てきてから顕著だが、アニメのバビル二世はヨミとの戦い以外では地球で生まれ育った浩一君だ。最終回のラストシーンなどを見る限りこれからは年相応の少年として暮らしていくのだろうと思われる。ではもしかしたら地球人離れした頭を持つ原作のバビル二世は?長い戦いだったと呟いてポセイドンと共に立ち去っていった彼がその後どうするのか、より一層想像のし甲斐が出てきそうでワクワクしている。

 忘れるにはちょっと惜しかったのでメモとして書き残していく。これを読んでバビル二世にハマってくれる人が増えたりしたら幸いである。


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