【書評動画】牧野智和『自己啓発の時代:「自己」の文化社会学的探究』 ~「自己啓発」をアカデミックに斬りつつ、ちゃんと面白いなんて

自己啓発の文脈を社会学的に考察したもので、著者の博士論文を土台に再構成した本。膨大な資料にあたったことがしのばれる緻密な内容には、素直に敬服するしかございません。

 筆致はかたいけど、ちゃんと面白く読ませてくれるあたりも魅力。論文的な筆致に徹しようとしながらも、ときおり「自分探しに悩んで軽くこじらせましたテヘッ」感やらが滲み出てしまっているあたりにも、妙に共感してしまいます。

 とりあえずアカデミックな知見を後ろ盾にした、アカデミシャン的な立ち位置の御仁が書いた本は、ビジネス書界隈にもたくさん存在します。が、明らかに勢いと手癖だけで雑感を書き飛ばしたようなクソ駄本もわりと目に付くわけです。その点、本書は全編を通じて、とても誠実にまとめられているので、これまた好印象。

ビジネス書や自己啓発書を読む上で、持っておいて損はない知見をたくわえることもできるので、副読本的にお手元においておき、折りに触れてパラパラとめくってみる……てな読み方でもお役立ちの一冊です。

●『自己啓発の時代:「自己」の文化社会学的探究』(勁草書房)
 http://urx.nu/augY

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