見出し画像

経験上最も緊張した陸路国境越え 後編

タンザニアの旅は本当に大変だった。長時間心地よくないバスの椅子に座り続けるという苦行もさることながら、出発しないバスを待ち続けるのも大変だった。インターネット環境は皆無、炎天下のなか特にやることもない人間にとって、楽しいことは食事以外になかった。食事といっても散々食べてきたチップス(フライドポテト)を毎回頬張り、空腹を満たす作業である。その作業をするのが毎日の楽しみだった。






カセシャというド田舎で国境越えをしてザンビアに入った。入国審査を終えて、両替を済ませていざ近くの町であるムバラに向かおうとしている。
目の前にあるのは2台のバス(ミニバン)と数台のバイクタクシーだけ。

所持金は千円のみ。正確にはまだ持っていたが、ザンビアクワチャは千円分のみ。

一台のミニバンには数人の乗客がいて、もう一台には誰もいない。その中で、一応毎回のこととして、すべての運転手に値段を聞いて回る。一台目の数人乗せたミニバンは3千円と法外な値段をふっかけてきた。よくあることだ。しかし、そうかと何も言わずにもう一台の車に近づく。

しかし、運転席に乗っているお兄さんはずっとスマホをいじっていて、俺の話を聞こうとしてくれない。そんで、一台目の運転手がきて、同じ値段だと言ってきた。1トリップに3千円もかかるわけないことは地図上の距離からも他の国での経験からもわかっていた。よってそれはぼったくりである。ある意味交渉の余地ありということも言えるので、普通の値段を言われるよりこちらとしてもありがたい。ここから交渉していけばいいということを暗示している。

まぁしかし、交渉をする中で千円分しか持っていないことを伝えたので千円でいいよ的なことを言われて千円払った。千円でも全然高いが面倒なのでしょうがない。助手席に乗り込む。

当たり前のことであるが、数人しか乗っていないのだからまだ動かないだろうと考えていた。タンザニアでは一つのミニバンに30人乗せるという荒業も垣間見た。そんなことが常識だったこともあり、俺が乗車してすぐに動き出したミニバンをどう解釈していいかわからなかった。








僕の頭の中では、とんでもない想像が膨らんでいた。

旅人界隈の中ではよく聞かれる話ではあるが、数人の客と運転手がグルで変なところに連れて行かされ身ぐるみをはがされるという犯罪手法である。

この状況は確実にリンクしていると思った。つい先ほどまでいた国は、詰めるだけ詰め込んで大勢を一気に運ぶというビジネススタイルだったが、今回は違うようだ。ターゲットとなる人間を見つけて、その人から何もかもを奪い取るというやり方を彼らはしてくると考えていた。

だからこそ、ムバラに着くまでずっと緊張していた。maps.meというアプリで追跡しながらムバラにしっかし向かっているか確認していた。しかし、体を押さえつけられて刃物を向けれれ脅されればmaps.meなど何の役にも立たない。




ムバラに向かう途中の村で一人の女性が降りた。彼女は犯罪集団には手を貸していないということだ。ひとり納得しながら彼女を見送る。

ザンビアのド田舎には珍しい東洋人にガン見され

(じゃあね、ご愁傷様、せいぜい命だけは助かることを願っているよ)

とでも言わん顔をしていた。






まぁ結局ムバラに無事着き翌日のバスでルサカに向かうことができた。

結論から言うとザンビアという国は素晴らしいと思う。バスが予定通りに出発するし、満員にならなくても出発する。

少しぼったくられたが、タンザニアとザンビアとではかなり移動のストレスに差がある。ザンビアは大型バスが田舎でもあり、揺れの少ないバスに乗れた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?