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「風景スケッチ」上達法・・レッスン2

見える範囲(視界)と絵にする範囲(視野=構図)

    風景を絵に描く時に、どのあたりまでの範囲が画面に収まるだろうかと、おおよその見当をつけることはとても大事です。画面の左端は、風景のどの辺りがくるか、右端はどのあたりかと、紙と対象である風景を見比べてみたり、実際に腕をのばしてあててみることをします。

 そして、画面の中に収まる範囲がおおよそ決まってから、高さは変えずに左右どちらかに振ってみる(水平移動させてみる)と、ちょうど収まりの良さそうなところが見つかったりします。
 画面の真ん中に大きな樹木が入ってしまい画面を二分割してしまう感じがするので、左右のどちらかに動かしてバランスの良いところを見つける。構図を考えて描く範囲をきめるというのは、そういうことかもしれません。
 人によっては、左右両端にはいるものの位置を忘れないために紙面に軽くしるしを付けたり、線を引いておくこともあります。さらに、鉛筆で薄くアウトラインを引いたりして下書きのようなものを描いてから始める人もいます。
 ただ、こういうことに神経を遣いすぎると、細かな違いやくるいが気になって、少しの間違いも気になり手が進まないということになりかねません。
    そうなると、風景を見た最初の印象なり感動はいつの間に消え去ってしまい、いかに正確に描くかということが最も大事なことになってしまいます。

 ものをしっかり見て正確に描くことは極めて大切なことですが、初めの印象や感動が消えないうちに、いち早くスケッチして画面に描きとめることです。
    最初の段階では、おぼろげで頼りない感じでも、少しずつ存在が明らかになっていくような描き方をすることです。

 以下、私が描いているスケッチのやり方を述べていきます。

1.P6号サイズの大きさ(41.7cm×27.3cm)のスケッチブックを使い、その大きさを基本にして描いています。
 左右の親指がスケッチブックの端の真ん中になるように持ち、自分の腕をいっぱいに伸ばして目の前に掲げると、視界が妨げられて見えなくなります。その見えなくなった範囲が絵に描く自分の視野ということになります。
    実際にやってみると分かりますが、自分の肩幅よりやや広い範囲が隠れて見えなくなります。
    スケッチする時は、片手でスケッチブックの下側を持って描くのですが、腕はなるべく伸ばして紙面を垂直に立てて描きます。

    片方の手でその状態を保つの
は、腕にも負担になりますので、はじめの段階のスケッチは、長くても5分程度です。この時、腕を自分の体に近づけてしまうと画面上での視野が広がってしまい、対象を正確に捉えることができません。
2.対象である風景の大きさと        同じサイズで、スケッチブックに描いていきます。P6サイズの視野が基本ということは、画面上でのモノの大きさと実際の風景でのモノの大きさが、1対1の比率の関係になっているということです。

 ですから、広々と砂浜が続いている海辺の景色を描くような時でも、P6の視野の中に収まる範囲を描いています。あそこまで入れたいからと無理に画面の中に入れて描くと、出来上がったものは不自然な仕上がりになってしまうでしょう。

3.いつも同じ視野で風景を見    て描くようにすると、風景を前にしてスケッチブックを持つと、おおよその範囲が分かるようになってきます。
    あの樹の根元からこちらの建物の下までが、自分の視野に収まっているように見えるという感じで、いちいち確かめなくとも見当がつくようになってきます。

4.スケッチブックの長い方は、私の手幅(手のひらをいっぱいに伸ばした時の親指から小指の先までの長さ)の2つ分で、短い方は、手幅1つと、指の幅4つ分の長さです。縦と横の長さの比率が2対3の割合に作られています。  

    はじめのうちは、細長い画面になれないと少し違和感があるように感じますが、慣れてくると、この比率のサイズが自然で、風景スケッチには適しているように思います。
5.油彩で描くときも、このP6の視野がベースになっています。
F0,SM,F6,F10,F20とサイズがいろいろ変わっても、描くときの視野は、いつもP6サイズの大きさが基本です。
    大きなキャンバスで描くからといって、自分の視野を広く取ることはしないし、また、小さなサイズで描くから、見ている範囲が狭くなるということはありません。
    特に油彩の場合は、スケッチとは違い、キャンバスを掲げて持つということはできません。イーゼルに載せてペインティングナイフと油絵の具だけで描いています。
    P6の視野で捉えた風景をF20で描いていくわけですから、画面が広くなった分だけ、対象の内容量がまばらな状態になりがちです。逆に考えると、その分だけ油彩の持ち味がいかせるということにもなります。画面の広さに負けないだけの存在や重さや迫力というものが欠かせないことになります。
    小さなサイズのキャンバスに描くときは、画面が狭くなった分だけ対象の内容量が密になり、煮詰まった料理のように味が濃くなりがちです。それで、小さな画面であってもP6の視野で見たようなスケールの大きさを感じるように表現する必要があります。
    手数を減らして簡略に描きながら、かつスケールの広さを感じるような表現が求められます。

6.基本にしている視野で絵を描くということは、油彩と同じようにスケッチ淡彩でも使っています。
 P6サイズを基本にして見た視野で、はがきサイズやF1でも、SM=サムホール,F4,F6のサイズにも描いていきます。
    サイズが小さくなるということは、絵を縮小するということではありません。それでは、油彩の場合のように、煮詰まった料理のような味の濃い絵になってしまいます。
    小さいから微細にして沢山集めて画面に納めるということではなくて、むしろ逆になります。P6サイズの絵を後ろに下がってみたときのような感覚で見ることが必要です。

 実際には、P6サイズで描いた絵を、小さなサイズと同寸になるまで離して、それを模写してみるという方法でトレーニングするのも良いでしょう。

7.風景を前にして描く時に、スケッチブックをあてて左端にあるものと右端にあるものを、まず確認しましょう。その時大事なことがあります。スケッチブックの紙の端ぎりぎりまで描かない、使わないということです。
 描いた絵は、額に入れて飾り、人の眼に触れて目てもらうことで、描いた自分と自分以外の世界とが繋がっていきます。額に入れることを予め考えると、親指一つ分くらいの余白、スペースが必要で、その部分に描いても有効範囲の外ということになるからです。

8.描く範囲が決まったら、左端から右端のほうへ描いていきましょう(右利きの人は、その反対は難しく感じるかもしれません)
 アウトラインや目印など描かないで、いっきにのびのびと描きます。
 そしたら初めに決めた範囲の右端が画面に収まらないという結果になるかもしれません。
 それでもいいのです。自分の目で見たものを自分の手で思ったように描けないと、失敗したと思うでしょう。でもそれは、失敗ではなくて、見たとおりに手がついていけなかっただけにすぎません。失敗した原因をあれこれ考えて反省することも意味がありません。
    そういうことは考えないようにして、目がみて手が勝手に動いた結果、見たとおりに描けるようになることのほうがずっと大事です。

9.風景をスケッチする練習として一番相応しいのは林や森のある風景です。自然の樹木を対象にして、見たままに感じたままに手を動かしてください。なるべく対象から目を離さずに、(つまり、画面の上に目を移さないで)手元を見ないで描く練習をすることです。

10. 最後にもう一つ大事なことがあります。5分くらいの短い時間で手早くスケッチするには、細かいとこを見ないように、ぼんやりと眺めて描くことです。
 ぼんやりした不確かな線で、淡い薄い柔らかい線でスケッチを始めていけば、後から描き加えて、形を作っていくことができるからです。(加藤)                      

ダーマートグラフの
スケッチ
ダーマートグラフの
スケッチ


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