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「風景スケッチ」上達法・・・レッスン4

「スケッチ淡彩の原点」         

1.「スケッチ・淡彩」の元になる     こと
 
★ スケッチ・・・その時の印象を瞬時に素描する(記録する)
★ 淡彩  ・・・色彩を用いてスケッチに肉付けする
(イメージを膨らませる)

    瞬時に描いたスケッチに淡い色彩を重ねた絵が,「スケッチ・淡彩」の原点です。風景や物の形を大ざっぱに描いて(少ない線描で),その上から淡い彩色をほどこした絵です。時間にしたら数分から長くても十数分ほどの間に,一気に描き上げたものですが,それだけで絵としての内容を備えたものになっています。

  2.  ここで大事なことは,風景や物の印象をスケッチ(記録)する時間の長さです。
    瞬時というのは,大きく息を吸って吐き終えるまでの間に一息で休まないで描くということです。時間にして7,8秒の間です。
   その間に,大まかな形を素描(そびょう)するには,描きこめる線の数もかぎられてきます。また,対象と絵とを交互に見ていたら,間に合わないので,「きわめて短い時間に合わせた手の動き」で,テンポよく描いていくことになります。
    7,8秒の間というのは,一手(ひとて)加える間ということです。その間に数本の線が引けたとしましょう。一息ついて,その上に次の一手を加えます。線の数が数本から十数本にふえます。さらに次の一手とつづけて重ねていくと,対象(風景や物)の大ざっぱな形が描けていると思います。

3.素描(そびょう)に慣れてないと,形がうまく取れないとか,思い通りに描けないということがでてくるでしょう。素描だから,形がくずれても思い通りにいかなくても,「しかたがない,こんなものだ」と考えられれば良いのですが,それが,なかなか難しいというわけです。

4. 描くテンポを変えてみる
 スケッチをして絵を描くということは,物を正確に見て写し取ることと理解されがちです。それでどうしても,丁寧に,時間をかけて,ゆっくりとした手の動きで,細かく描こうとします。
 ここで,一つ大きな問題があります。それは,時間の掛け方とテンポ(手の動き)のことです。丁寧にじっくり時間をかけて描くということは,「同じテンポで時間を重ねる」ことにつながります。描き初めのスケッチから彩色をして完成させるまで,同じような感覚で時間を過ごしていませんか。 
    人によっては,仕上げに近づくほど,より丁寧に進めて,さらに時間をかけてはいないでしょうか。

 これは,同じテンポの繰り返しで時間を架けていくので,どうしても,線描の数も彩色の手数も増えてしまい,結果として描きすぎるということになってしまいがちです。時間をかけるほど,増えていきますので,歯止めが利かない状態になってしまいます。

    絵を長く続けて描いている人ほど,その人なりの「絵を描くリズムやテンポ」が身についています。いわゆる,その人らしい描き方とか個性とかいうことです。それを否定するのではなく,それに新しいことを加えていくと考えてみたらどうでしょう。

    発想の転換をしてみるということです。一手くわえる時間の長さは同じにし,それを繰り返して描いていくのですが,テンポ(手の動き)を変えていくのです。

5. 始まりは簡略に,仕上げに近づ くほどテンポよく
  テンポを徐々に変えながら描いていく「スケッチ・淡彩」のやり方を練習するには,あまり複雑でない対象を描くことから始めたほうがやりやすいと思います。
    慣れてきたら,少しずつ「建物など構造物のある対象」へと進めたら良いでしょう。

 あまり複雑ではない対象といえば,緑の樹木が見える公園など絶好の材料になるでしょう。あまり手数がかからないような対象を選
ぶということです。

 描き始める前に,対象の風景をぼんやりと眺めて,目で樹木などの形をなぞるようにして,大まかに「どこにどれくらいのモノがあるか」見ておきます。
    それから,一息(7,8秒)つく間に,手を動かしていきます。初めのスケッチは,ゆったりとした気持ちで,ゆっくり大きく手を動かしましょう。線の数は少なくて良いのです。初めからたくさん線を引こうとすると,手が早くなり気持ちもあせってきます。

 ダーマートグラフの場合は,軸を寝かせて持って描きます。軸を立てると線が硬くなり,ゆったりとした心地よい線になりません。
肩や腕,手首にかける力を抜いて何も考えないようにして,手の動
きにまかせましょう。
 一息ついたら,次の一手(ひとて)を加えていきます。この時も
対象に目をやって,最初の一手で描き切れなかった部分をぼんやり見てください。それから,先ほどと同じ時間(7,8秒)で,線を加えていきます。こんども,たくさん描こうとせずに,ゆったりとした気持ちで描きましょう。あと,もう一手をくわえたら,あらかたのスケッチ(粗描)が描けているはずです。

6. 「色の明るい」ところから彩色する
    素描のスケッチができたら彩色に移ります。明るい色から余白を十分あけて,バサバサと筆を寝かせて彩色します。この時,筆の持ち方と使い方がポイントになります。ダーマートグラフと同じように,軸を寝かせてナイフ持ちにして塗ります。動かし方は,スケッチの素描の時と同じように,大きく長く,一気に,なるべく筆を止めないでぬるのがコツです。

 6号か8号くらいの太さの丸筆を使いましょう。混色した絵の具を
筆につけて,紙の端から端まで動かしたときに掠れないぐらいの分量を含ませておきます。水が多すぎると乾きにくくなるので,水は少し控えめにして,水たまりができないように塗ります。
 筆の向きが同じにならないように,樹木の枝や葉が伸びていく方向に合わせて動かします。地面は水平,幹は縦方向のタッチが基本です。

 彩色の時も,一手にかける時間はスケッチの時と同じ長さです。
7,8秒の間(一息つく間)に彩色するわけですが,色を混ぜたり水加減をみる時間はふくまれません。紙に筆をおく,色を運ぶ時間です。一手にかける時間が短いですから,そうたくさんは塗れません。これも三度ほど繰り返して重ねていくことで,スケッチの素描に色彩が重なり対象のイメージはさらに豊かなものになります。
 混色も彩色も,あまりその物の色(固有色)にこだわらないようにしましょう。それよりも,色の明るさをよく見て彩色します。

7. 同じ絵を二枚描いて比べる

 素描のスケッチに彩色をしたものは,すでに,それが「一つの絵」としての完成度を持っています。「水彩スケッチ」とか「淡彩スケッチ」と言われる浅い描き方をして仕上げた絵と似ているところがあります。
    ただ,前述のようにして描いた絵=「スケッチ・淡彩」は,いわゆる「淡彩スケッチ」とは「スケッチと彩色のテンポ」が全く違います。絵に描けた時間が決定的に違っていますので出来上がりもかなり違ったものになるでしょう。

 同じ場所で同じ絵を二枚描くということは,ほとんどの人がやりません。しかし,こうした絵の練習としては,ぜひやってみる価値はあると思います。5や6のところで書いたような進め方で同じ絵を二枚描いておくのです。二枚描いても30~40分もあればできるでしょう。
  そのうちの一枚は,そのままにしておいて,後の一枚に加筆していきます。架ける時間は同じにして,今度は,加筆するときのテンポを変えていきます。最初のステージよりも,少し早いリズムでスケッチしたり,彩色したりを繰り返していきます。そうすると,速いテンポで加筆したぶん,より多くのものが加えられることになって,質量ともに加速したような倍増したようなものが備わっていきます。
 スケッチでいえば,より力強さや重みが加わり,色彩の面で言えば,より濃厚な明暗の違いが表れてきます。
 そうして仕上げた絵と,素描してから彩色した初めの絵とを並べて見てください。自分の描いた絵を並べて評価するときのポイントをあげると,つぎのようなことがあるでしょう。

・スケッチと色彩の調和

  • 明暗と濃淡

  • 彩色の程度(彩度,水加減)

  • テンポよく描けているか(動き,絵のスケール)

自分が描いた絵を自分で評価するには,同じものを描いた絵が二枚あると良いです。一枚描いて仕上げただけでは,それを描き進めた途中の経過が見えないからです。  

    特に絵を描こうとした最初のイメージが,あるのと無いのとでは,大きく違ってきます。描き重ねた,その一番下にあったものが見えなくなってしまうのが普通だからです。

8. 何も考えずに無心で描く

 風景や物を目で見て,その情報をダイレクトに手に伝えることが
できれば,目と手が連動して描くことができます。つまり,あれこれ考えずに,手の動きに任せて描くことで,テンポよく躍動的にものをとらえることができるわけです。考えれば考えるほど,手が止まってしまい,それで,また考えてしまう。手が止まることなく描ければ,短時間で質も量も豊かな内容が備わってきます。

 理屈としては理解できても,実際にはなかなかできません。自分の手の働きというものを,どこかで信じられないという不安があるからです。無心になるのは難しいことですが,いい絵を描いてやろうとか、何とかまとめなくてはとか,絵らしく仕上げないと,などと思わないようにして,何も考えずに描くようにしたらどうでしょうか。
 自分の呼吸に合わせて無理なく自然に,手の動くままに描いてみましょう。そこから,今まで想像もしなかったような絵が生まれ,驚かれるような世界につながっていくように思います。
                              2018年2月作成

            

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