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三原色と緑の混色…自然な色を作るには2


                     緑豊かな「風景」を絵にしたいと思うことが、どなたにもあるのではないでしょうか。緑の風景といっても、季節によって、時刻や天候によって、かなり違いがあります。

三原色と色作り(混色して緑色,影色を作る)


1. パレットにある「黄色」と「青色」を混ぜて,緑色を作ってみましょう。どんな色合いの緑色ができるでしょう。混ぜ合わせる量を少し変えたり、水の量を加減して紙に塗って見比べてみましょう。

2. 混色して作った「緑色」をパレットにある緑色の絵の具と比べてみましょう。同じ色合いの緑色がありますか。
    パレットにある絵の具の緑色よりも、混色して作った緑色の方が、色味が豊かで、自然な感じ(地味だが落ち着いた感じ)になりませんか。

3. 自然の中にある緑色は、とても繊細で複雑な色合いに見えます。実物そっくりの色を混色で再現するのは、かなり困難です。そっくりな色合いを再現するのではなく、色合いが似ている感じを表現してみましょう。

4. 三原色の黄と青の混色で作った「緑色」をベースにして、パレッ
トにある緑色も使いながら、幅のある色合いを表現しましょう。

5. 混色して緑色を作る時、あると便利なのが、天然の土製顔料(絵の具)です。イエローオーカー、ローシェンナ、バーントシェンナ、バーントアンバーなど、どれも天然の土製顔料から出来た絵の具です。それらを僅か少量加えて混色した緑色は、とても落ち着いた感じのいい色になります。(この時に注意したいのは、土色系の絵の具を、入れすぎないこと。ほんの僅か、少量入れるのがポイントです。)

6. 混ぜる順番が、色味の違いに表れます。「黄緑色」を作るには、黄色に青か、緑色を加えて作ること。黄色味が強い緑色ということで、言葉の順番通りに黄色を先に筆でとって,後から青か緑色を混ぜていきましょう。筆でとる順番を逆にすると(先に青をとって後から黄色をまぜると)、青みが強い青緑色になります。

7. 三原色の黄色との混色で、とても使いやすいのが「フタログリーン」という絵の具(シアン系)です。メーカーによってはビリジャンと呼ばれる似た絵の具もあります。フタログリーンは、透明度が高く黄色との混色で鮮やかな緑色(メイグリーン)ができます。また、色幅のゆたかな緑色を作るうえで、どの色とも相性が良く、混色のベースとして使える絵の具です。(ただ、フタログリーンは、色味が強いので、ほんの僅か混ぜるのがポイントです)

8. 混色して色を作る時、一度にたくさんの量を作らないことです。
   筆にとる絵の具の量が多くなると、どうしても濃い色になりがちです。はじめから濃い色で彩色を始めると、全体の色調が強く重く
なり、明るさや軽やかな感じが表現しにくくなります。
  水の量を加減して、少量の色(一通り画面に塗ったら無くなるくらいの量)を作りましょう。パレットに作った色がなくなったら,あらためて作ります。混ぜる絵の具の量と水の量との加減で,同じ緑色でも微妙な違いが出てきます。
  画面が同色の緑色で覆われないように,微妙に違う緑色で彩色できると,変化や感じ方の違いが生まれて,味わいのあるものが表現できます。

9. 赤色の役割。緑色を作るときに使うのは,黄色と青色が主体になりますが,赤色も大切な役割をはたします。
    絵の具の三原色、黄色,青色,赤色をまぜると黒色に近い色ができます。この性質を使うと,黄色と青色との混色で緑色を作る時に,ほんの僅か赤色を加えることで,微妙に重い感じの緑色が生まれます。ほんのわずか,使い過ぎないようにするのがコツです。

10. 彩色の考え方として、実際の風景とそっくりな色を作って塗るのではなく、パレットの上で混色してできた色を画面のどこに塗ったら良いか、どのあたりに使えそうかと考えてみましょう。
 実物そっくりな色を作ろうとするあまり,パレットのどこにも色があふれて,新しい色を作るスペースがないということにならないようにしましょう。
 一度つくった色は,なるべく画面のどこかに塗って残さないことです。そうすれば筆もそれほど汚れずに使うことが出来ます。
 ティシュや布で筆をぬぐったりせずに,筆にわずかに残っている
絵の具が,つぎの混色の時に微量の出汁(だし)になると考えてください。
 その意味では,水入れの水もあまり取り換える必要がありません。

11. パレットに残った汚れ色を、綺麗に洗わないでおくこと。汚れ色に見えるその色は、どこかで出番がくる貴重な「宝の山」です。彩色のたびに、筆を一回ずつ綺麗に洗わないことと併せて、心がけてみましょう。

12. 陰影(かげ)色は,風景スケッチの彩色で良く使う色です。例えば,日差しを受けて陰影ができているところは,固有の陰影(かげ)色が使われます。
    地面におちた影ならば,地面の色の上に影ができているわけですから,その影色も地面という固有な物の色がベースになります。地面の色を塗ったあとで,地面に

相応しい影色を重ねると良いでしょう。
 こうした時の影色には,幾通りかの作り方を身に着けておくと便利です。少し茶色味がかった影色,少し青みがかった影色,少し緑色がかった影色,など,いくつか自分の影色をもっていると良いかと思います。

    もう一つ、陰色があります。地面に落ちた木の影色ではなく、木その物に見える「かげ」色のことです。木の色、葉や枝、幹など、木そのものの色に依るところが大きいので、陰色を作る混色では、それらの色を使うのが自然です。もちろん、重ねて塗ることで表現するのも効果的です。
     三原色の黄色と青色で、緑色を作り、赤色も加えて色味の深さや陰影色を表現する。これらの混色に、土性顔料の「だし」をあわせて、より自然な色合いを作り出す表現が生まれます。
    絵の具の色数を減らして、彩色を工夫する余地が、まだまだ、ありそうです。
                     2018.1.作成
                     2024.7.加筆訂正
                                                    加藤正三郎 

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