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Crocus

君の指先を想う。白露。


いつだって、君の綴る詩が
掠れてしまうことを恐れている。

喉元から吐き出して、
手元を離れていった言葉は、
空気を伝って、あの日から。

注がれ続ける炭のように、
心の灯火を消さぬように、と
応える。
応え続けている。


それを世界では、幸せ と呼ぶのだろう。

しかしどうだろう。

きみだってにんげんなのだから、
時間というものが必要、なのでしょう。

素晴らしい芸術の傍らには、
いつだって 孤独 が付き纏うのでしょう。

私はそれを知っている。
知ったつもりでいる。

君という一人のにんげんを愛してしまうほどに、
君という一人の芸術家は死んでしまうのではないだろうか。

消えてしまいたくなる。
君の指先がなぞる線描が愛おしいからこそ、
そう考えてしまう。

そうして、私はきっと、最期の日、
横たわる君の肢体に、
花を焚べることすら憚ってしまうだろう、
と思う。

それがまるで呪いのようだね。なんて言ったら、君は怒ってしまうだろうけれど。

静かな黄昏。ひぐらしの声。空白。

君のことを想って消えてしまえるのなら、
それでも悪くないな なんて
柄にもなく、そう思うの。

ごめんね。ここまで綴っておいて、
本心なんて半分程度なんだ。

だからね。

どうか、どうか。

君の人生においての最適解を。

どうか、どうか。